第51話『ユヅキ』
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だが、ここから一瞬で決着をつければそれも構わない。
「無駄だァ!!」
「な!?」
悠長に考えていたのも束の間、晴登が変化したのに合わせて、ヒョウも“あること”をした。
「寒っ…!?」
それは戦闘の始まりにも見た、周囲を極寒に変える吹雪だった。吐く息が白くなり、自然と震えが込み上げる。
「こんな中で風でも使った日には、凍え死ぬんじゃないか?」
「それが狙いか…!」
見事に相手の術中に嵌まり、苦い顔をする晴登。
もうこの場には、この天気を中和できるミライがいない。つまり、完全に奴の領土に入ってしまった訳だ。
「さて、どうしてやろうか…」
「…っ、"鎌鼬"!」
「効かないって」
「くそっ!」
万事休す。
ヒョウは攻撃を止め、ジリジリとこちらに近づいてくる。その足を止めるにしても、晴登では力不足だった。
「さぁ、おしまいだよ」
ヒョウの両手で魔力が高まっていく。もしかしなくても、大技の予感だ。
このまま為す術なく受けるしかないのか。
それとも・・・
「いや、全力で抗う!!」
「…!?」
晴登は風を使って走り、ヒョウに特攻する。
身体の芯をつき抜けるような寒さを感じたが、しのごの言ってられない。彼は晴登の風を封じたつもりでいる。つまりこれは、ある意味好機なのだ。
「"鎌鼬"!」
「…ちィ!」
舌打ちと共に、風の刃が砕かれる。しかし、これでヒョウの技の溜めを解除できた。
──もっとも、狙いはそれだけではない。
「…とった!!」
猛スピードで滑り込むようにして、ヒョウの背後に回る。
彼は慌てて振り向いてくるが、さすがに遅い。
「喰らえ、烈風拳!!」
盛大な掛け声と共に、拳を放つ。
今までで一番良い場面だ。角だって余裕で狙える。
──勝った。晴登はそう確信した。
だが・・・
「素手じゃあ、無理だね」
「マジ、かよ……このタイミング、で…」
ヒョウが薄ら笑いを浮かべる意味。それを直に感じる晴登は、悔やみの声しか上げられない。
──風が止んだ。
「はッ」
「うっ……」
魔力切れによる倦怠感を味わい、足元がふらつく。それを防ぐかのように、ヒョウの右手が晴登の首を捕らえる。
苦しい。かなりの力で絞められている。
吐くつもりの息が首で抑えられ、外に出ていくことができない。
「苦、しっ…!」
魔術を使って抵抗できない以上、この苦しみからは解放されない。
薄目で見ると、ヒョウはニタリと不気味な笑みを浮かべていた。
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