第51話『ユヅキ』
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治療に専念してください。俺が時間を稼ぎますから。そしたらまた、戻ってきてください」
ミライは何か言いたげだったが、結局は動くことすら叶わなかった。
晴登はミライから離れ、再び戦場に足を踏み入れる。
「…待っててくれたんだな」
「その男の行動が気になっただけさ。自分を犠牲にしてまで他人を庇って、一体何のつもりなのって」
ヒョウは信じられないと言わんばかりの表情だった。
晴登はそれを見て、自分と彼との種族の差を改めて知る。
「…他人を助けたいっていうのが、そんなにおかしいことか?」
「この世は弱肉強食さ。弱い者を助けていたら、いつ足元を掬われるかわからない」
「だから見捨てるのか? “人”ってのは、人と人が支え合って生きていくから、“人”って言うんだぜ」
「何言ってんのさ?」
「所詮、鬼には解らねぇよ」
最後の言葉がヒョウを刺激したのは明白だった。
彼は額に青筋を立て、ギリッと歯を鳴らしてこちらを見据える。
「人間ごときが、ボクを見下すのかい?」
「お前みたいな心がない奴に、俺は負けない」
「……あぁ、そう」
晴登は身構える。
ヒョウが再び、右手をつき出した構えをしたのだ。
彼の掌の先、冷気が凝結していくつも氷が生成されていく。
しかし今回は、先程のような丸い氷塊と打って変わり、先端の尖った打製石器の様な氷を造り出していた。
「喰らえ」
「当たるかよ!」
槍のように射出されたそれらを、晴登は風を使って防ごうとした。しかし、
「なっ……が!?」
氷の刃は風を容易く切り裂き、そのまま晴登の身体も切り刻んだ。
皮膚や肉が抉られ、所々から鮮血が吹き出ていく。
「そういう、ことかよ…!」
晴登は、ヒョウの攻撃が変化した理由を遅れて理解する。彼はやはり、力任せの知能の無い獣とは違った。
こうなってしまえば、風で防ぐことは不可能。晴登は移動の回避を行い始める。
「さっきよりも緊張感がヤバい…」
『逃げる+風』で避けていたのが、『逃げる』だけになってしまうのは、大きな痛手。
しかし、文句は言ってられない。体力を絞り出して、足を動かさねば。
「さっきの威勢はどうしたの? 逃げてるだけじゃ勝てないけど?」
「わかってるっての…!」
飛来してくる尖った氷塊を横目に、晴登は隙を狙っていた。
その時、晴登はあることを閃く。
「これなら…!」
足に風を纏わせ、一時的に超人の脚力へと早変わり。
もはや、『走る』ではなく『低空飛行』に近い。
機動力が上昇し、いくらか避けやすくなる。魔力を多く使うのが難点
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