第51話『ユヅキ』
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・・。
「思い返すと、色々あったな…」
走馬灯…ではないが、晴登との思い出が蘇ってくる。
その中でもやっぱり一番嬉しかったのは、最初に握手したときだった。
あの時にようやく、初めての友達ができたのだ。
そして、初めて・・・。
「…だから、ボクだって晴登の力になりたい」
ユヅキは力強く呟くと、治療に専念した。
*
ドシャッ
肉が地面に叩きつけられる、生々しい音を聞いた。
思わず耳を塞ぎたくなるが、それ以上に心配の念が強まっていく。
今しがた地面に落ちたのは、空中に放たれ無防備になった晴登の身代わりとなったミライである。彼はその際氷柱を身体に受け、大きな怪我を負った。
晴登も、空中でミライに無理やりに押されたこともあり、不安定な体勢で地面に落ちかけたが、自分だけは風で何とか着地している。
「ミライさんっ…!」
ミライは四肢を投げ出し、仰向けで地面に転がっていた。晴登はすぐさま駆け寄り、容態を診る。
だが、彼の怪我は思わず目を逸らしたくなる程のものだった。
「ハル…ト、平気…か?」
「はい。でも何で俺を・・・」
「君が死んだら…ユヅキが、哀しむ…だろ?」
「うっ……」
ミライの言葉が、晴登の胸を衝く。そこだけは晴登も最も気にしていたから、言って欲しくなかった。
守る、なんて誓っておきながら、これではユヅキに合わせる顔がない。
「それに…僕は、治癒魔法が使える…から、君と違って、生き残り…易いんだ」
力無い笑みを浮かべたミライに、晴登は笑い返すことができない。逆に、どうしてそこまで平静としていられるのだと、問いかけたいくらいだ。
「だからって俺を・・・」
晴登はもう生を諦めていた。
だから今さら助けられても、どうすればいいのかわからない。
その時、ミライは徐に口を開いた。
「諦めるな…ハルト。諦めない限り…未来は、消えない」
「…っ!」
弱々しい口調ではあったが、その言葉はハッキリと聞き取れた。
──諦めない限り、未来は消えない。
晴登は何度もその言葉を反芻し、深く噛み締めた。
自分は何て薄情な真似をしていたのだろうか。無責任で傲慢、自分勝手なバカ野郎だ。
自分1人が楽になったとして、その後はどうする?
ミライとユヅキの2人で戦わせたとしたら、勝率は3人の時よりもっと低くなる。そんな状況下に、彼らを送ろうとしたのか? 今思うと、とても呆れる。
「…すいません、ミライさん。お陰で目が覚めました。後は俺がやります」
「ぐっ……いや、僕もまだやるさ・・・」
「ミライさんも、ユヅキみたいに
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