211部分:金銀妖瞳その四
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金銀妖瞳その四
「フン、ようやくわかりおったか、この愚か者が」
マンフロイはそう言うと渦の中から出て来ていた周りの者達に目配せをした。暗黒の司祭達がユリアを取り囲みアルヴィスから引き離す。
「連れて行け」
彼は強い口調で命令を出した。ユリアは両手を暗黒司祭達に掴まれ何処かへ連れさらわれようとする。
「御父様・・・・・・っ!」
悲痛な声だった。しかし父はその娘の声に対して苦渋に満ちた表情を浮かべるしかなかった。
「ユリア、済まない・・・・・・。今の私には御前一人救う力さえ無いのだ。だが・・・・・・」
懐から何かを取り出した。それは黄金色に輝くサークレットであった。
彼はそのサークレットを魔力で宙に浮かばせた。それはそのまま浮遊しユリアの小さい頭に覆い被さった。
「これは・・・・・・!?」
ユリアはそれを見上げて問うた。
「御前の母、ディアドラの形見だ。御前の身に何かあったならば必ずや御前を救ってくれるだろう」
彼は静かに言った。
「何をしておる、早く連れて行け!」
痺れを切らしたマンフロイが部下達に命令した。ユリアは左右の手を掴む暗黒司祭達と共に黒い渦の中に消えていく。
「御父様・・・・・・!」
「ユリア、これが最後になる」
父は娘に対して言った。
「私とディアドラの分まで生きろ。決して私のような愚かな道を歩んではならぬ」
「はい・・・・・・」
「そしてこれだけは知っていてくれ」
彼は言葉を続けた。
「私は何時までも御前を見守っている。そのことだけは忘れないでくれ。そしてユリウスを・・・・・・」
その時だった。
「あっ・・・・・・」
ユリアの声がした。彼が言い終わらぬうちに彼女はその黒い渦の中に消えた。それを合図にマンフロイや他の暗黒司祭達も次々と渦の中に消えようとしていた。その時マンフロイが部下達に別の命令を発していた。
「この城から逃げた子供達を追え。見せしめとして一人残らず殺してしまえ!」
「ハッ!」
司祭達は渦の中で敬礼するとそのまま姿を消した。後にはアルヴィスだけが残った。
「少女一人の命すら救えないとは・・・・・・。これも罪の報いか」
アルヴィスは誰もいなくなった大広間で一人呟いた。
「私がこの世で果たすべき事はもう殆ど残ってはいないな。残された事は・・・・・・」
南西の方の窓を見た。
「因果の決着を着ける事だけか。そして・・・・・・」
後ろの壁を振り返った。そこにはヴェルトマー家の炎の紋章があった。
「炎を本来の場所に戻しておかねばな」
紅の炎の紋章、魔法戦士ファラにより定められたヴェルトマー家の紋章である。かっては悪しきものを焼き滅ぼす正義の炎と称されていた。だが今は邪悪の炎と呼ばれ蔑まれている。
「そうしてしまったのは私自身だ
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