同棲時代の封印
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緒くたにするこの感性がもう…。まあいい、俺たちはもう他人なのだ。
「なんか分からんが要らないものなんだな。俺も要らない。捨て」
捨てるぞ、と云いかけて壺を持ち上げようと手を掛けた。
「………んぐっ」
―――何ぞこれ、動かん!!
「…どしたの?」
沙也加が不思議そうに覗き込んで来た。
「おっ前…これ、さっきヒョイって運んでなかったか…?」
「えっ、軽いでしょ?」
そう云ってもう一度、ヒョイと持ち上げて見せる。
「いやいやいや、そんな馬鹿な!…お前ちょっと置いてみろ」
首を傾げながら壺を置こうとする沙也加からひったくる…と肩が抜けそうなプレッシャーと共にズブンと変な音を立てて壺が落ちた。
「んなっ!」
「なにそれ!?なんでそういう冗談やるの!?馬鹿にしてんの!?」
沙也加が目を尖らせて叫ぶ。
「ばっ…そんな風に見えたか!?これワザとやってんだったら俺パントマイムで食っていけるわ!!」
―――いや、喧嘩している場合じゃないぞコレ。
「……よし、お互い落ち着こう。真面目に聞いてくれ」
「今度は何!?」
「…この壺、相当怪しいぞ」
怒りが冷めやらないのか、肩を激しく上下させつつ、沙也加がぐっと押し黙った。
「…てか、まじなの?まじで、これしきの荷物、持ち上がらないの?」
「まじか、と問いたいのは俺の方だ。炬燵の板すら持ち上げるのに難儀するお前がこんなものを…」
え、でも私普通にここから…と壺の置いてあった辺りを覗き込んだ沙也加が、鋭い悲鳴を上げてあとじさった。
「ど、どうした!?」
「脚っ!!脚が、脚がいっぱいっ…!!」
沙也加をどかして覗き込んだ刹那、俺も悲鳴が口をついて出た。
「何だこれっ!!あ、脚っ…!!」
壺が置かれていた辺りの新聞紙に『く』の字型の黒いものが相当数散らばっていた。
「これ!絶対これ、あれしか考えられないよ!!ゴキブリの脚!!37匹分はあるよ!!」
「すげぇなお前、レインマンかよ」
「うるさいっ!そんなことより、なんでゴキブリの脚だけ残ってるの!?」
「いやいや、お前これがゴキブリって前提で話し過ぎだ」
ちがうちがう、これはあの気持ち悪いゴキブリとかじゃなく、ほら、あれだ…。
「じゃ何!?」
「かっ………かなぶん………」
「押入れの暗がりにこんな数のカナブンが潜んでるとかナニゴトだよ!!」
現実を見ろー、ほらコレは何だーと叫びながら沙也加は俺の頭をがしっと掴んで脚が散らばる新聞紙に近付けた。
「ゴキブリですっ!ゴキブリの脚ですっ!だからもうヤメテ!!」
そう叫ぶまで放してくれなかった。
「ひゃっ!ゴキブリっ!」
再び沙也加が短く叫んだ。何だ今更。
「改めて驚くのか。仕切り直しか」
「ちがう別件!生きてるやつ!」
壺の横を這い進む黒いあんちくし
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