一章 小さき魔物 - 海竜と共生する都市イストポート -
第8話 シーサーペントの要望
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す?」
「人間から」
「……!」
――人間? どういうことだろう。
公用語を知っている何者かが、シーサーペントに何か言ったのだろうか。
「それは、誰なんですか」
シドウは混乱し、おかしな返し方をしてしまった。
誰なんですか? と聞かれても、人間とはかけ離れた生物であるシーサーペントが答えられるはずがない。
「わからない。でも、浜の水、汚れている」
「そうですか……。港に来ていたのは、それを人間に言いに来たと?」
港へ入り込んできた動機を聞くと、シーサーペントは「そうだ」と答えた。
「シーサーペントが子育てで浜を使うというのは知っていますので、とても勝手な提案おするようで心苦しいのですが……。水の汚れの問題が解決するまでここの浜は使わず、他の安全な海へと行ってもらうことはできないのですか?」
「できない」
「理由を聞いてもいいですか?」
シドウには「できない」という答えも予想できたし、そしてこれから返ってくる“理由”についても、なんとなく予想はできていた。
だが、それでも念のために聞いた。
「我々、一族は、人間の、ずっと前から、この海、この浜、使っている」
――やはり。
きちんとプライドを持っているモンスターであることが、今のやりとりだけでもわかった。
人間側の都合で退くなどありえない――そういうことなのだ。
そして、シドウはそれが当たり前であるとも感じた。
人間だって、大魔王に「言うことを聞け」と言われて、素直に「わかりました」とはなっていない。大陸中の人間の思いを背負った勇者が選出され、大魔王を討伐し、自由が奪われることを自らの力で防いだ。
このシーサーペントの主張もそれと同じで、生物としては当然の対応だろう。
――しかし困った。どう返事しようか……。
シドウが考えていると、シーサーペントはさらに付け加えてきた。
「汚す、やめなければ、この街、滅ぼす」
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