廃墟の章
X
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ロレンツォの出現から五時間程経ったであろうか、夜も明けて朝の清々しい光が、森の鬱蒼と繁る木々の隙間から降り注いだ。
皆は荷物を纏め始め、それが終るやロレンツォとミヒャエル、そしてヨゼフは草を刈り始め、エディアとマーガレットは食事の支度に取り掛かった。その際、マーガレットは木苺を摘みに森の中へと入っていたのであった。この時期にラノベリーという木苺が実っていることを、マーガレットは知っていたのである。
このラノベリーは、言い伝えによればその昔、ラノンという生け贄にされた乙女が好んだもので、それ故にラノベリーという名で呼ばれるようになったとされる。
さて、エディアが朝食の支度を終えた頃、カゴ一杯にラノベリーを摘んだマーガレットが帰ってきた。
「今日はこんなに沢山採れたわ。」
そう言うや、マーガレットはラノベリーを人数分に分け、それを携帯ようの小さな容器に移した。何だかんだと言っていたロレンツォの分も用意されており、皆と一緒に道を切り開こうとしているロレンツォを見て思うところがあったのであろうと思われた。それをミヒャエルが見て、やれやれと言った風に苦笑したのは言うまでもなかろう。
朝食も済み、皆は再び仕事へと取り掛かったが、ラバが通れる程切り開くのにはさして時間は掛からなかった。
「こちらが新道であったようですが、完成以前に街が廃れたために使用されなかったようです。それで皆さんが通ってこられた旧道が、現在の主道になったようですね。」
切り開いた先を差し、ロレンツォはそう言った。確かに、目の前の道は四人が通ってきた道とは打って代わり、堅焼き煉瓦が隙間なく並べられていたのである。現在の舗装通路と同じ仕組みで作られたものであり、それがそのまま残っていたのであった。
「まさか…ここまで技術が進歩していたとはな…。」
その道を見て、ミヒャエルは溜め息混じりに呟いた。その言葉はミヒャエルだけでなく、他三人も同じように感じたであろう。
現に、この遺跡が発見されるまで、この技術は四十年程前に開発された新しい技術だと思われていたのであるのだから。
そうして後、皆はその新道に歩みを進め、目的地である廃墟へと向かったのであった。
皆は最初、ロレンツォが夜中にこの様な場所まで来ていたため、廃墟はかなり近いものだと思い込んでいた。
だが聞いてみると、ここからでは丸二日掛かるとのことであり、期待外れに皆は苦笑いするしかなかった。
「すいませんね。薬草の採取をするときは、かなり広範囲を歩きますので…。しかし、皆さんが歩いていた旧道よりは早いですよ?旧道は途中で村を一つ経由しますから、あのまま進んでいたら七日は掛かりましたからねぇ。」
周囲の雰囲気を感じてか、ロレンツォは明るい声で言ってきた。それを聞き四人は、まだまだ自分達が知らないこ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ