廃墟の章
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とが多いということことを改めて感じたのであった。
廃墟に入るまでの二日間、これといって何事もなく順調に進むことが出来た。その道すがら、四人はロレンツォへと様々なことを問っていた。特に、レヴィン夫妻は森や廃墟のことだけでなく、伝説の兄弟のことなども問っていたのである。ロレンツォはそのどれもに、自ら知りうる限りの知識を持って語り、皆は彼の見識の深さに圧倒されたのであった。無論、マーガレットとミヒャエルも多くの問いをロレンツォへと出したが、これもまた然りである。
この四人の問いの中でロレンツォは、レヴィン夫妻に問われた伝説の兄弟についてを特に詳しく語ってくれたのであった。
「レヴィン兄弟は同じ場所に埋葬されましたが、暫くして一度、墓所を移動されたと言われています。理由としては、兄弟が眠る場で争いが起きたことが原因で、この時に移されて以来、墓所の所在が不明となっているんですよ。」
それは遥か遠い過去の物語である。この広大な森が、未だ大地を覆い尽くさぬ時代の哀歌。
「ある古文書によると、兄弟の墓所には“雪薔薇”が咲き誇っていたとされ、それを目当てにした墓荒らしがいたようです。聖文書大典には‘雪薔薇は邪な者を退ける'とありますが、聖パナスの手記には続きがあり、それにはこう書かれてました。」
そこまで語ると、ロレンツォは木洩れ日を仰いで歌うように言葉を紡いだ。
“兄弟の憩いし地をば白き雪の薔薇守りし。然し邪な者、後断つことなく墓を暴かんと欲す。故、地に数多の骸転がりしことありて、村人皆おののいて神に祈りし。後に原初の神に許しを得、兄弟の亡骸をば安らけく憩えん地へと移さん。"
「最初は、祖父母の住んでいたメルテという小さな村に墓はありましたが、今はそのメルテの村さえ特定出来ません。そのため、メルテの村跡を見付けない限り、墓所を探すのはかなり困難と言わざるを得ない状況です。」
このロレンツォの話に、レヴィン夫妻は落胆を隠せなかった。今向かっている廃墟は、学者間では“コバイユの街”跡であると言われている。メルテとは、古文書によるとコバイユより馬車で三日は掛かるとされており、遺跡調査もこの廃墟より先には進んではいないと言われていたのであった。そうなると、とてもレヴィン夫妻では先には進めない道程となってしまうと言うことなのである。それ故、レヴィン夫妻は共に顔を見合せ、落胆の溜め息を洩らしたのであった。
「お二人とも、そうガッカリなさらないで下さい。」
ロレンツォはレヴィン夫妻の落胆ぶりに驚いき、慌てて言葉を付け足した。
「お二方の心情はお察しします。ですが全く希望が無いわけではありませんよ?調査はずっと続けられてますし、森も少しずつですが開拓されてきています。現在は、ナンブルク地方のクレドを経由しての調査で、フォルスタ経由の調査ではないん
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