廃墟の章
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をしながら、ヨゼフは不思議そうにロレンツォへと尋ねた。
「そうですねぇ。先ず言えることは、元来、原初の神を崇拝するシオン教が二つに分裂したこと。そして、時の王と大地の女神は夫婦であることが挙げられます。人々や自然に関連した神託を下されるのは、大地を統べよと命ぜられた聖エフィーリア様が下すのは、しごく当然とも言えましょう。」
ここで語られた「シオン教」とは、聖文書大典の編纂以前の古宗教であり、純粋に原初の神を崇め、その戒律を頑なに守っていた宗教である。現在、その教えは完全に失われており、失われた切っ掛けはプレトリス王国誕生の際に起きた大戦が原因とされていた。この大戦の最中に、時の王と大地の女神の伝説が生まれたため、人々はこの二人の聖人を頂点として二つの宗教を興したと考えられているのである。余談ではあるが、ヴァールもリーテも聖文書の著者である。ヴァールは大地の女神エフィーリアを中心に著し、リーテは時の王リグレットを中心に著したために、分かれた二つの宗教には彼らの名が付けられたのである。
「そう深く考えないで下さい。私も未だ、この神託の本当の意味を理解しかねているのですから…。そうだ、宜しければ別の道をお教えします。この大木を退けて進めずにここへ留まっているとお見受けしますので…。」
ロレンツォがそう言うと、四人は目をキョトンと丸くしてしまったのであった。その中で、ミヒャエルは「他に道があるのか」とロレンツォへ尋ね返したのである。
「はい。私はそちらの道を通りここまで薬草を採りにきたのです。まぁ、草や小さな木を刈らねばなりませんが、すぐ隣に位置してますし、そう時間も掛からないでしょう。日が昇ったら始めましょうか。」
ロレンツォにそう言われ、四人は一先ず安心したのであった。このままでは、いつになったら出発出来るのか解らなかったからである。
そうして後、ロレンツォはそのまま四人の元へ留まり、共に朝陽が昇るのをまったのである。彼ら四人を廃墟へと案内する役も引き受けてくれたため、レヴィン夫妻は喜んだのであるが、マーガレットはロレンツォのことを俄には信用出来ず、それを露骨に態度へ出すことがあってミヒャエルに諌められることもあった。
しかし、そんなマーガレットに対しても、ロレンツォは寛容に許していたと言われている。これもまた必然なのか、それとも神の気紛れなのか…。
それが解るのは、少し先のことである。
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