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SNOW ROSE
廃墟の章
W
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と赴き、その街を訪れし者等に原初の神の御言葉を述べ伝えよ。そうして後、街を訪れし者等の中に、王国を統べる者現れん。その時、神は汝に更なる御言葉を授けられるであろう。汝よ、その時まで堪え忍び、如何なることがあろうとその地を出てはならない。全て述べ伝えた時、汝は幸いの花園へと招かれるであろう。雪の如く純白なる白き薔薇咲き誇る園へと…。」
 歌うように紡ぎ出された神託の言葉は、四人の旅人を驚嘆させるには充分だと言えた。特に、白薔薇の伝説は有名であり、別名「雪薔薇」としても長らく語り継がれてきていたのである。
 しかし、時の王リグレットを奉じたリーテ教を国教にした際、この伝説は異端とみなされてしまい、それらを記した世俗の書物は皆、リーテ教信者によって焼かれてしまった時代があった。それ故、聖文書以外の編纂されなかった古文書の大半は、この時代に失われてしまい、一部はこうして口伝によって受け継がれてきたのである。
「しかし…聖エフィーリアがこのような時代に神託を下すとは…。」
 衝撃のあまり皆口を鉗んでいたのだが、ミヒャエルはそんな静寂の中、ボソッと呟いたのであった。
 彼の疑問は尤もなことと言えるだろう。この王暦の晩年とも言える時代、宗教はその意味に於て、既に衰退の一途を辿っていたのである。宗教がその精神を残せていられたのは、もはや音楽や絵画などといった芸術分野の中だけであったのである。
 それについては、音楽家であるレヴィン夫妻はよく理解していたであろう。それ故、エディアはその細やかな問い掛けに、伝承の言葉を用いて答えたのであった。
「ヴァール伝原書によれば、“人の心、原初の神より冷め離れし時、必ず新たな律法もて邪なりし者らを律さん”とありますわ…。私達は恐らく、神の御心から遠く離れてしまったのかも知れませんわねぇ…。」
 エディアが感慨深げにそう言うと、マーガレットはそれに答えるかのように言葉を継いだ。
「私も、その伝承は知っているわ。レヴィン兄弟や女神の騎士の伝説も、それに由来しているようだけど…。でも、もしそうだとしたら、今がその時と言うことなのかしら…?」
 ロレンツォとの出会いが街中であったなら、恐らく四人の対応は違っていたであろう。しかし、レヴィン夫妻は祖先の墓、それも伝説となったジョージとケインの墓を探そうと旅してきたのである。マーガレットとミヒャエルにしても小説のためではあるが、古文書や遺跡などを調査する旅をしてきたのであるから、皆ある種、伝説を追う旅をしてきたとも言えよう。その点からみて、この森でロレンツォと出会ったというのは、偶然というよりむしろ必然と言った方が良いのかも知れない。
「しかし…現在の国教はリーテ教で、時の王リグレットを奉じている。何故ヴァール教で奉じている聖エフィーリアが神託を下したのか…?」
 後方で腕組み
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