廃墟の章
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動物などが時々活動している他は、特に気に止める程のことはなかった。
それがミヒャエルの番となった時である。暫くは火の爆ぜる音と、森から聞こえる風などの微かな音だけが響いていた。
しかし突如、近くの茂みから大きな音が聞こえてきたためミヒャエルはそれに驚き、短剣に手を掛けて茂みを警戒したのであった。
「誰だっ!」
小さいながらも鋭い声で、ミヒャエルは茂みへと声を掛けた。獣であるならばミヒャエルにでも分かるが、その音は獣のそれとは全く異なり、明らかに人間のものであったのである。そのため、ミヒャエルは精神を研ぎ澄まし、茂みから何か応答がないかを待った。
どれ程の時が経ったであろうか、暫くして一人の男が茂みから現れた。その男の風貌は、誰が見ても一目でそれと解るもので、ミヒャエルは男を見て自らの目を疑ったのであった。
「な…何故に神父がこのような場所に…!?」
驚きのあまりミヒャエルは声を上げてしまい、その声に皆が目を覚ましてしまった。そして、目の前に立つ見知らぬ男を見て、何事が起こったのかと目を瞬かせたのであった。
さて、その神父服の男は、さも済まなさそうな様子で火の前に立ち、その素顔を明らかにしてから言ったのであった。
「驚かせてしまったようで、大変申し訳ない。」
そう言う男を見ると、その顔は無精髭で覆われ、服もかなり傷んでいた。その事から、この男も旅人であることが窺えたが、何故このような寂しい場所に、それもこのような時間に一人きりで居るのかを、皆は理解に苦しんだのであった。
その男は、皆が訝しんでいるのを知りつつも、暫くはただ佇んでいるだけであった。四人が男を警戒しながら観察して見ているのと同じく、男もまた四人を観察している様子であったが、男は不意に口を開いて名を明かしたのであった。
「私はロレンツォと申します。このような身形で心苦しいのですが、何分、廃墟暮らしで儘ならぬことも多く、今は薬草を採りに出ておりました。」
ロレンツォと名乗った男の話をそこまで聞くや、四人が四人とも絶句したのであった。
それもそうであろう…例の目的地である廃墟である。人が離れて久しいその街に、一体誰が人が住まうなど考えようか。そこで好奇心旺盛なマーガレットが、ロレンツォへ何故にその様なことをしているのか問い掛けたのであった。
その問い掛けに、ロレンツォは静かにこう答えたのである。
「ある時、聖エフィーリア様が私のところへと姿をお顕しになり、神託をお告げになったのです。私はその神託を守るよう申し付けられたのです。聖エフィーリア様は私に、こう告げられたのです。」
そう言うとロレンツォは、まるでその時を思い出すかのように目を閉じて、聖エフィーリアからの神託を語り出したのであった。
「汝、かの地に在りし過ぎ去りし街、人々の捨て去った街へ
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