廃墟の章
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言いながら、あなたの方が私以上に失礼ですわよ!人の挨拶は最後まで聞くものよ。大体あなたときたら…」
また同じような繰り返しに、エディアが溜め息を吐いて止めに入った。
「まあまあ、お二方。私共の姓は偉大な祖先のこともあり、伏せることも御座います。本当は、先に伝えておけば良かったのですわね。申し訳御座いません。」
エディアに頭を下げられたマーガレットとミヒャエルは、二人共に慌てて頭を下げ返し、先にミヒャエルが口を開いた。
「いや、こちらが姓を名乗らなかったのがいけなかったのです。改めて、俺は…シックハルトと言います。名のミヒャエルは発音しずらいので、ミックと呼んで下さい。」
こうして後、その資料室では歴史や美術、そして音楽など多岐にわたる話が展開され、ここに集った者達を大変満足させたのであった。
陽も陰り、欠けた月が星を引き連れて輝き出す頃、教会の門番が閉門を告げに来たため、五人は外へと出た。しかし、マーガレットはここで別れるのも惜しいと感じ、レヴィン夫妻とディエゴにどこへ泊まっているのかを尋ねた。
「私共はハインツさんの“ブルーメンシュトラオス亭”に泊まっております。」
問われてヨゼフが答えると、マーガレットはくるりとミヒャエルへと向きを変えて言った。
「私達もそこへ泊まるわよ!ミヒャエル、直ぐに別邸のマルクに言って荷物を運んでもらってちょうだい!」
そう言われたミヒャエルは、勘弁してくれとばかりに言い返した。
「君ねぇ、たまには自分で行けばいいだろ?馬車だってあるし、俺が先行って部屋用意してもらうから。」
「こんな薄暗い中、レディに一人歩きしろっての!?」
マーガレットは喚き立てているものの、ミヒャエルはそれを無視して先に歩いていたディエゴ達の後を追ったのであった。
「君なら大丈夫だって。それじゃ宜しく!」
「な…!ミヒャエル、お待ちなさ!」
藍の空の中に美しく輝く月が掛かり、五人の足元を明るく照らし出していた。風は春の優しき匂いを運び、まるで子を抱く親のようにも思えたのであった。
ただ…遠くからマーガレットのミヒャエルへの罵詈雑言がなければ、もう少し春の宵を楽しめたであっただろう。兎も角、こうしてマーガレットとミヒャエルもディエゴやレヴィン夫妻同様、ハインツの営む“ブルーメンシュトラオス亭”の客人となったのである。
“ブルーメンシュトラオス”とは、古い言葉で「花束」の意味がある。花のように人々を憩わせる場所になるようにと、ハインツの母が付けたものであった。
この“ブルーメンシュトラオス”の名はハインツにとって、今は亡き両親との思い出や幸福の象徴であったのかも知れない。
それ故、ハインツはディエゴの王都に移る勧めも断り、このフォルスタの街に留まり続けて宿を守っていたのであろう。
今も昔も、月
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