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SNOW ROSE
廃墟の章
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ちゃ…」
「だ・か・ら!あなたに呼び捨てされる謂れはないわ!」
 今の二人の会話に、ディエゴとレヴィン夫妻は唖然としてしまった。特に、このマーガレットと言う女性が、こともあろうに侯爵の令嬢であるということに三人は驚かされてしまい、何と言えば良いやら言葉が見つからなかったのであった。
 暫くはマーガレットとミヒャエルが押し問答を繰り広げていたが、前の三人が何も話し出せないのを見て、マーガレットは渋々自己紹介から入ることにしたのであった。
「不躾をお許し下さい。私はリーテ侯ハンス・ベネディクト・フォン・リューヴェンの二女、マーガレット・クレーヌ=リューヴェンと申します。」
 そう言うと、マーガレットは三人へと優雅に会釈をした。そして、最初に指名のあったディエゴから正式な挨拶に入ったのであった。
「私は王都で歴史学を教えております、ディエゴ・ソファリスと申します。以前、リーテ侯とは幾度かお目にかかる機会が御座いましたが、よもやこのような場でご令嬢にお会いするとは思いませんでした。」
 ディエゴは苦笑混じりにそう答えた。彼自身、各地の貴族に呼ばれることはさして珍しくもなく、それ故、リーテ侯とも幾度も顔を合わせていたのであった。
 歴史学をディエゴのように専門的に教えている者は、この大陸に僅か五人しかいない。貴族の教育の一旦を担う学問にしては甚だ少ないと言わざるを得ないが、これが現状であり、この分野がいかに難しいかを物語っていよう。
「名は父から伺っておりました。大層博識でらっしゃると、父は頻りに誉めておりましたわ。お顔を合わせるの初めてですが、どうか宜しくお願い致します。」
 マーガレットはそう言って会釈をすると、今度はディエゴの後方に控えていたレヴィン夫妻へと視線を移し、「そちらは?」と尋ねてきたのであった。問われたレヴィン夫妻は数歩マーガレットへと歩み寄り、軽く会釈をして挨拶を述べた。
「私共はレヴィンと申します。私がヨゼフで、こちらに控えますは妻のエディアに御座います。」
「レヴィンですって!?」
 夫妻の名を聞き、マーガレットは目を丸くしてしまった。先にミヒャエルと挨拶を交わした際にはミヒャエル同様、名しか明かしておらず、姓を口にするのはこの二人には初であったのである。
「あなた方…まさか、あのレヴィン家の方なの?多くの芸術家を排出している名家レヴィン家の…。」
 マーガレットに問われ、夫妻は多少困った顔をしながら返答をしたのであった。
「そうに御座います。私共は音楽を生業としておりまして、今回は旅行がてらこの街を訪れたしだいです。」
 レヴィン夫妻がそこまで挨拶を述べた時、横から今まで黙っていたミヒャエルが口を挟んだ。
「先程は姓を聞きそびれましたが…まさかレヴィン家の方とは…!」
「ミヒャエル!あなた、私にあんなこと
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