廃墟の章
U
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
教指定の布告の後、エフィーリアを奉ずる教会は急速に廃れていったのであるが、一部の時の王を奉ずる信者達が暴走し、エフィーリアを奉じ続ける教会を打ち壊すということがあった。そのため、これだけ美しく残されているというのは稀なのである。
この聖エフィーリア教会も無論、例外なく打ち壊しの手が及んおり、それは酷い有り様であった。それがどういう経緯でここまで美しく復元されたかを、ディエゴは少しずつ夫妻へと語り始めた。
「五五一年のこと。この聖エフィーリア教会は、王都の歴史学者モーリス・クレント氏によって再発見されるまで、打ち壊されたまま野晒しになっていました。幸いにも、地下の文書保管所は難を逃れていたため、クレント教授はその古文書を調べあげ、ここが旧ドナの街であったと学会へ発表したんですよ。その後、この教会は元来の美しさを取り戻すべく、多くの建築家や画家・彫刻家などが集まり、街の人々の援助などもあって、ようやくこのように復元されたんですよ。」
そう言って、ディエゴは教会の内部へと夫妻を引き連れて入っていった。そして礼拝堂の天井を眺めながら、話の続きを紡ぎ出したのであった。
「ここに描かれている聖画は古い順にアンドレ・ショーン、ドミニク・バーン、エンナ・ブラウン、ブリギット・マーレなどの名画家達が手掛けたもので、彫刻の方は大半はクヌート・リューヴェンの手によるものです。絵も彫刻も全て、その方々の遠い弟子達によって復元されたんですよ。」
「クヌート・リューヴェンですと!?あのリューヴェン王の末裔で、現リーテ侯の祖先ですな?」
今まで静かに聞いていたヨゼフが、興奮気味に口を開いた。後ろではエディアも驚きの表情を浮かべていた。
クヌート・リューヴェンとは、現リーテ侯ハンス・ベネディクト・フォン・リューヴェンの四代前の人物であり、リーテ地方を治める領主に着任するまで彫刻家として名を馳せていた。特に、宮殿や教会に残された彼の作品の大半は、この国の重要文化財となっているのである。
また、この人物の遠き祖先には、賢王の名で知られているハンス・レオナルディ・フォン・アルフレート・リューヴェンがいる。この長い名前は、偉大な業績を残した祖先の名を与えられたためだと言われているが、ハンス王自身、その功績は後世にまで轟く程のものである。
「知ってましたか。ですが、こうして蘇るまでは打ち壊された酷い状態で放置されてたんですよ。修復には十五年もの月日が費やされましたが、そのお陰で国はこの教会を文化遺産として保護し、現在にまで至っていると言うわけです。」
その後もディエゴは、その博識を余すことなくレヴィン夫妻へと披露し、二人を感心させたのであった。夫妻もまた、その好奇心ゆえにディエゴへと多くの質問を投げ掛けたが、そのどれもに彼は的確に答え、この夫妻を大変満足させたと伝えら
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ