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SNOW ROSE
廃墟の章
U
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 どこまでも透き通る蒼い空の中、一際高く聳え立つ塔がある。
 これは聖エフィーリア教会にある西塔で、鋭い屋根の先端が印象的な建造物だが、醸し出される雰囲気は穏和で人々の心を優しくさせた。教会そのものよりも、この西塔の方が寧ろ有名なくらいである。
「この西塔は、聖エフィーリア教会が建造される以前からあったとされるもので、下地は火の見櫓や見張り塔の役割があったそうです。そこへ教会を建てたものだから、塔を教会に合わせて改築したとか。」
 教会の敷地内に入る前より、ディエゴはレヴィン夫妻へと教会の歴史を聞かせていた。二人とも歴史には興味があり、彼の言葉を熱心に聞いて時折質問すらした程であった。
「ソファリスさん。その櫓とは、王国以前からあったものなんですか?」
 ヨゼフは塔を見上げながらディエゴへと問い掛けた。このヨゼフの熱心さに、ディエゴは大いに喜んだ。
 正直に話せば、ディエゴがこの街へと訪れる理由は、王都での教授生活に嫌気が差してのことである。自らは至極真面目に講義をしていると言うのに、それを聞く生徒の質の悪さが問題なのであった。
 歴史学は人気の高い分野で、講義を受けたがる者も多かった。しかし、それは国の高官になるための課題のようなものになっており、実状は質問すらしない生徒の集まりでしかなかった。ディエゴはそれも仕事と割り切ってはいたが、年に数回はこうやって気分転換に幼馴染みの経営する宿へと泊まりに来るのであった。
「良い質問ですね。この西塔の原型は、北皇暦時代の終わり頃、この地方がカルツィオと呼ばれていた時代にまで遡ることが出来ます。」
 そのディエゴの答えに、レヴィン夫妻は驚いた。それが事実ならば、この西塔は少なくとも五百年の歴史を持っているからである。
「それでは、リトスの白き城やコロニアス大聖堂などと同じ程の時代を見続けてきたと?」
 ヨゼフの傍らからエディアが興奮気味に口を開くと、ディエゴはにこりと微笑んで答えを返した。
「よくご存知ですね!そうですよ。あの宗教改革の時代からあるもので、教会自体一説には、あのジョージ・レヴィンの葬儀が執り行われたとも伝えられてますから。」
 それは遥か遠い昔の物語である。それはもはや伝説となり、兄弟の住んでいた街さえその場所を特定することはできないのである。
 それ故、レヴィン夫妻は連れ立ってこの街へと訪れ、遠き祖先である偉大な兄弟の足跡を辿ろうとしていたのであった。
「しかし…ソファリスさん。この教会は聖エフィーリアを奉じたものだと聞きます。ですが、このように美しいまま保存されているのは…一体どういうことなのですかな?」
 このヨゼフの問い掛けは、ディエゴの顔に陰りを落とさせた。
 先に、教会が時の王リグレットを奉ずるものに変わっていったことは語ったが、それには続きがある。国
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