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SNOW ROSE
廃墟の章
I
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一頁と言えようが、国家が宗教を支配した悪例として後世へと伝えられているのも事実である。
「ではお二方。あの教会を見に行ってはいかがですか?」
 熱心に談義をしている夫妻へと、ハインツは教会見学を勧めた。他の教会とは違い、この聖エフィーリア教会は外観内装ともに申し分無い美しさを備え、歴史的にも重要な建造物であった。この街を訪れる者の中には、この教会目当てで訪れる者も少なくないのである。
「あなた。夕までには未だ時間もありますし、見てきても宜しいんじゃありませんか?」
 エディアの声にヨゼフも頷き、教会見学に赴くことにしたのであった。そのような二人に、ハインツはうってつけの人物を紹介しようと進言したのであった。
「レヴィンさん。実は、隣室にお泊まりの常連様が歴史学者なのです。きっと一緒に行ってくれると思いますが、お誘いしてみましょうか?」
 ハインツの申し出に、ヨゼフは戸惑って目を丸くしてしまった。しかし、妻のエディアは大喜びして、是非一緒に行きたいとハインツに言ったので、彼はその人物を呼ぶことにしたのであった。

コンコンッ。

 ハインツが扉を叩くと、その部屋の中から直ぐに返事が返ってきた。
「全部筒抜けだから今行くよ。」
 そう言うや扉を開けて、三十代前半の教師風な男性が姿を現した。
「初めまして。僕は王都で歴史学を教えているディエゴ・ソファリスと言います。」
 男性は自ら名を名乗り、目の前に立っていたヨゼフに手を出して握手を求めた。
「これはご丁寧に。私共はレヴィンと申します。私はヨゼフ、こちらは妻のエディアです。」
 ヨゼフはそう挨拶し、差し出されたディエゴの手を握ったのであった。後ろで控えていたエディアも手を出し、微笑みながらディエゴへと挨拶をした。
「エディアです。ご一緒して頂けるとのことで、宜しくお願い致します。」
「お二方、そう畏まらないで下さい。僕は貴族なんかじゃありませんから、お気楽になさって下さいな。」
 三人はそう挨拶をし終えるとハインツに出掛けの挨拶をし、一階へと降りようと部屋を出た。しかし、ディエゴは何かを思い出したかのように振り返ってハインツへと言った。
「あっと…ハインツさん。コックのベルディナータさんに、僕の料理にアスパラを入れないように伝えて下さいよ!」
「お客様、それは無理で御座います。彼女は一流の料理人で、私とて口を差し挟むことは出来ませんので。」
 ディエゴの言葉に、ハインツは少々笑いを堪えながら答えた。
「またそれか!ハインツ、僕のアスパラ嫌いは知ってるだろうが!」
「はて…?お客様、お口が悪う御座いますよ?」
「さらりとかわすな!」
 ハインツとディエゴは親しそうに言い合っているが、実は彼等は幼馴染みなのである。とは言っても、ハインツとディエゴが初めて出会った
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