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SNOW ROSE
廃墟の章
I
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。」
 ハインツはそう答えると客人に来客帳への記入を促すと、男性はそれを受け取って名を記入したのであった。

ヨゼフ&エディア・レヴィン

 男性の記した名を見て、ハインツは咄嗟に音楽を連想してしまった。そのため、本来聞くべきようなことでないことを口にしてしまったのであった。
「お客様。大変不躾な質問ですが…もしやそのお荷物は楽器でしょうか?」
 ハインツに問われた夫婦は目を丸くして、そして苦笑しながら答えた。
「その通りです。これはリュートで、こっちの小さな方はヴァイオリン。鞄の中にはトラヴェルソもあります。なぜお気付きに?」
 今度はヨゼフに問い返され、ハインツは失敗したと言う風に額を掻きながら答えた。
「いや…レヴィンという姓でもしやと。」
「では、音楽を習ったことがおありで?」
 次には後ろで控えていた奥方であるエディアが、バツの悪そうなハインツに問い掛けたのであった。
 当時、レヴィンと言えば音楽家の家系で知られていた。古くはヴォルフ・レヴィンにまで遡るが、この人物はジョージ&ケイン兄弟の四番目の叔父に当たる。他三人の叔父達は時の国王を怒らせて国外追放になったため、レヴィン家の直系はこのヴォルフの家系のみである。
 このヴォルフの家系だが、そこから四つに分かれており、ヨゼフはヴォルフの三番目の息子エマヌエルの家系であった。因みに、このプレトリスには二十三人のレヴィンがいたが、現在では五人の男子が残るのみとなっている。
「はい。亡き父が学んでおりまして、私は鍵盤を少々その父から学びました。」
 それから暫くは、ハインツとレヴィン夫妻で音楽談義となった。それを見たマリアはギョッとして、直ぐ様ハインツに歩み寄って言った。
「あなた!お客様をお部屋へ案内もせず、立ち話なんて失礼ですよ!」
 もっともな意見に、ハインツはしまったとばかりに苦笑した。レヴィン夫妻も威勢の良いマリアに多少苦笑いしつつも、「気になさらんで下さい。」と言ってハインツを庇ったのであった。それからそそくさとハインツは夫妻の荷物を持ち、二人を二階の客室へと案内した。夫妻の部屋は南側の陽当たりの良い部屋で、窓からは街並みの美しい風景を堪能することができた。
 さて、このレヴィン夫妻だが、ある目的があってこのフォルスタの街を訪れたのであった。それは、今は消え去ってしまった高名なレヴィン兄弟の足跡を辿り、失われた墓所を探しに来たのである。
 このフォルスタの街から入る深い森の中に、古い廃墟の街があるのは先に語ったが、レヴィン夫妻はその廃墟に目をつけていたのである。しかし、歩けば約二十日程もかかる場所であり、二人は迷っていた。街に頼めばハンターを護衛として付けてはくれるが、信用出来るか否かが問題なのである。
 何はともあれ、一先ずは情報を集めようと、荷
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