間章V
たゆとう光
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際へと歩み寄り、持っていた袋より酒瓶を取り出した。
「多々の生命を奪いし者よ。この先、奪いし分だけ生命を育み、幸福を齎さんことを。涙を笑みに変え、哀しみを喜びに変えんため、我ここに原初の神に祈りを捧げん。」
そう言うと、クルトは酒瓶の蓋を開いて中の液体を海へと注いだ。それは最も高価な酒とされる、ドナというワインであった。
最後に、アヴィが波打ち際まで進み出た。アイリーンとクルトは静かに後退し、彼に祈りの場を明け渡したのであった。
「マリー。君を失って、もう五年もの歳月が流れたよ…。僕は未だ、君のことを想い続けてる。きっとこの先も、君以上に愛せる人はいないだろう…。マリー…だからこれだけを持ってきたんだ。君に渡すはずだった…この指輪だけを…。」
アヴィはそう言って、手にしていた指輪を海へと高く放ったのであった。
「ただの自己満足かも知れないけれど…。神よ、どうかこの想い、このたゆとう光に乗せてマリーの元へと届けて下さい…。」
そうアヴィが波間に囁いた刹那、海にたゆとう光が一際眩しく輝いた。
「汝が願い、確かに聞いた。」
その眩しい光の中より、聞き慣れない女性の声が聞こえてきた。
眩しさに顔を覆ていた三人は、その声を聞いて大いに驚いた。
暫くして光が収まると、三人は声の主を探そうと目を開くと、海の上に一人の女性の姿を見い出した。その女性の髪は美しい金色で、大きな栗色の瞳をしていた。
その女性は白い衣を纏い、その衣を揺らして海の上に立っていたのである。
「あ…あなたは一体…」
クルトが女性に向かい、恐る恐る声を掛けた。すると、女性は優しく微笑んで答えた。
「我が名はエフィーリア。自然の調和を保つ者、神の言葉を伝えし者。」
それを聞いた三人は目を見開き、その場に平伏そうとした。しかし、エフィーリアはそれを即座に止めさせた。
「我に平伏すなかれ!原初の神に平伏すが善い!」
エフィーリアはそう言うと、海の上から浜辺へと移動し、恐れおののく三人の前へと歩み寄った。そして、中央に座していたアヴィの前へと来ると、徐に彼へと告げた。
「我、汝が願いを叶えよう。汝の混じりけなき心、真の願いを…。神は汝等を見ておられた。神は汝を善き者とされ、それ故、我は汝に遣わされたのだ。」
「し…しかし…、私は教会に通ってはおりません…。」
あまりのことにアヴィは震え上がった。エフィーリアは大地の女神として、この地の信仰を集めている聖なる方である。恐れるなと言う方が難しいと言えよう。しかしエフィーリアは、そんなアヴィに優しく微笑んで言った。
「人よ、教会とは神が居わす場に非ず。神は如何なる場所にも居わすのです。心清き者よ、恥じることなかれ。汝は願いを叶うるに足る、善き行いをしてきたのだから。」
エフィーリアはそう告げると、少
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