間章V
たゆとう光
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。突如、大きな揺れが二人を襲ったのである。
「な、なに…!?」
二人はその場で抱き合い、その揺れが収まるのを待った。暫くして揺れが収まると、アヴィとマリーは手を取り合って街へと駆け出したのであった。
二人が戻った時、街の姿は変わり果て酷い状況となっていた。
「ど…どうして…。」
先に起きた地震により大半の家屋が倒壊しており、その一部から炎が上がっていた。
この土地はいままで地震がなく、家屋の作りは軽く設計されていたのだ。
「マリー、君は家へ戻って家族の無事を確認するんだ!俺も父さんと母さんの様子を見てくるから。」
「分かったわ!アヴィ、気を付けてね…。」
マリーは心配そうにアヴィを見た。アヴィはそんなマリーを抱きしめ、祈るように言った。
「大丈夫だよ。きっと皆無事さ…。」
そうして二人は各々の家へと走ったのである。
アヴィが家へと辿り着いたのは、三十分近く経ってからのことであった。普段なら十分も掛からず着けるのだが、道に倒壊した家屋などが倒れていたために思うように進めなかったのである。
「父さん!母さん!」
アヴィの目の前には、もう家とは呼べぬ建物の残骸が山となっている。
「どこにいるんだよ!父さんっ!母さんっ!」
一筋の光でも見つけられないかと、アヴィはその瓦礫の山を退けようした時、近くの宿屋の店主ミッケルが彼を止めに入った。
「止せ!お前まで下敷きになっちまうぞ!それに、この街へと、もうじき津波が来る。早く山へと避難するんだ!」
「ミッケルさん、父さんと母さんが…!」
なおも瓦礫を退かそうとするアヴィの頬を、ミッケルは思い切り叩きつけた。
「お前にゃ酷な話しだが、親父さんらはもう助からねぇ。ここで助けようとジタバタしてりゃ津波に呑まれちまうぞ?そうしたら、一体誰が死んだ者を弔うってんだよ!俺達は何がなんでも生き抜かなくちゃならねぇんだ!」
ミッケルがアヴィにそう怒鳴った時、海の彼方から何かの音が響いてきた。
「クソッ、もう来やがった!そら、急げ!こりゃ間に合わんかも知んねぇなぁ…。」
ミッケルはアヴィの手を無理矢理引き、山の方へと駆け出した。
この時点で、未だマリーは家族と共に家にいた。マリーの家は倒壊を免れてはいたが、かなり酷い状態には代わりなかった。だが、両親と二人の兄は大した怪我もなく無事であった。
皆は山へと向かうため家を出た。山の中腹まで来ると、アヴィの姿がどこにも見当たらないことにマリーは不安になり、そして事もあろうに、マリーは一人で麓へと向かってしまったのである。
「マリー!アヴィ君ならきっと上にいるはずだ!戻ってくるんだ!」
家族の言葉も耳に入らぬまま、マリーは愛しい人の姿を探すべく、山へと登りくる人の波に消えた。
そうしている間にも、津波は刻一刻と近
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