間章V
たゆとう光
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し後退して再び口を開いた。
「それ故、汝の願いを叶えよう。汝が愛しき者を、汝の元へ還そう。これは、原初の神が御決めになられたことである。」
そう言い終えると、エフィーリアの体から目映い光が放たれ、三人は眩しさのあまり顔を覆った。
暫くすると光は収まり、三人は恐る恐る目を開くと、そこには最早エフィーリアの姿は無かった。しかし、三人は女神の姿を見た時よりも目に映るものに驚き、自らの目を疑わざるを得なかった。
「マリー…!」
三人の目の前には、津波に呑まれ死んだはずのマリーが立っていたのである。
その姿は大人びており、この五年間をまるで生き続けていたようにさえ感じられた。
「原初の神の慈愛により、私はあなたの元へと還されました。あなたの愛が、私を呼び戻してくれたんです…アヴィ!」
「マリー…マリー!」
アヴィはマリーへと駆けて行き、その体を強く…強く抱き締めた。
アイリーンも涙を流しながら妹の元へと歩み寄り、少しはなれた場所では、クルトがこの神の奇跡に感嘆し、そして感銘しつつ高き空を仰ぎ見ていた。
「人の命なぞ、水辺にたゆとう光の如く…。しかし、それ故に輝きを増して美しい…。」
クルトはそう一人呟き、優しき瞳を喜ばしき三人へと向けたのであった。
原書はここまでで話を終えているが、幾つかの文書に、その後の話が記されているものがある。
その一つに聖マルガリータが残したものがあり、それにはこう記されている。
後に、アヴィは祝福を受けしマリーと婚姻を結び、ノベール家へ家族として迎え入れられた。
この二人の間には二人の子が生まれ、双方共に男児であった。
一方の名はゴットフリートと名付けられ、後にノベール家当主となる。
このゴットフリートは貿易と、それに使う帆船の改良に才覚を表して国の重役に抜擢された。経済にも才覚があったようで、新たな時代を築いた一人として名を残した。
もう一方はアンドレアスと名付けられ、建築や水路、防波堤などの設計に才があり、地震に耐える家屋の設計や津波に強い防波堤の建設など、現代に伝わる多くの技術を産み出した。
現在ある運河橋も、このアンドレアスが設計の基礎を作ったものであり、耐久設計の父と呼ばれている。
さて、父であるアヴィであるが、彼は伯爵であるクルトと、侯爵婦人であるアイリーンの推挙によりロッツェンだけでなく、領主不在であった二つの街をも兼任して領主の地位を与えられた。
そのため、時の国王より伯爵の地位を授かったが、それまでには多くの艱難があったのであった。
しかし、それらが如何なるものであったかは知られてはいない。
フレミング伯とシュターツ侯及び侯爵婦人の連名による推挙は、王暦四七九年に成されているが、アヴィが爵位を授けられて領主となったのは、七年後の四
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