209部分:金銀妖瞳その二
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金銀妖瞳その二
「そうだ。祭壇の底に隠されているものだ」
「何故それを・・・・・・」
パルマークはその言葉にハッとした。
「私とて聖戦士の直系だ。それ位すぐにわかる。そしてこれがどういう意味かわかるな」
「・・・・・・・・・」
「それを持って城に残されている子供達を連れて逃げろ。追っ手が来ぬうちにな」
「は・・・・・・はい」
パルマークはその身体からは考えられぬ速さで部屋を後にした。アルヴィスはそれを見届けると今度は別の者を呼ぶよう命じた。
ユリアが入って来た。ペルルークで双瞳の老人にさらわれて以来アルヴィスが全力を尽くして手元に保護していたのだ。それには理由があった。
「御父様・・・・・・」
自分と父と呼んだ。紫の瞳が潤んでいる。
「私、全てを思い出しました・・・・・・」
「そうか」
唇を噛む。滲み出る血が悔悟の血となり口中を満たす。
「あの日マンフロイ司祭に連れて行かれたユリウス兄様は戻って来られた時別人の様に禍々しい魔力に包まれていました。そして私を殺そうとしそれを庇った母様が倒れられ最期の力で私を・・・・・・」
粒の様な涙が零れ落ちる。アルヴィスはそれを見てうなだれた。
「私は馬鹿だった。マンフロイに踊らされているとも知らず・・・・・・。気付いた時には全てが手遅れとなっていた」
「御父様・・・・・・」
「御前には済まない事をした。私を恨んでいるだろうな」
「そんな・・・・・・」
ユリアは首を横に振った。
「私にとって御父様はイツまでも優しい御父様です。いつも可愛がって下さった・・・・・・」
「御父様か・・・・・・」
アルヴィスはその言葉に唇を再び噛み締める。両方の拳が強く握られる。悲しい苦渋が顔に満ちる。
「ユリア、最後に一つだけ言っておきたいことがある」
「えっ・・・・・・」
そう言うとそっとユリアの左の瞳に自分の右手の平を当てた。そして何かしら唱えると白い光が手の平から溢れ出した。
「見なさい」
鏡を手渡した。ユリアが覗き込むとそこには信じられないものが映っていた。
「そんな・・・・・・」
鏡に映るユリアの右の瞳は元の紫だった。だが左の瞳は・・・・・・違っていた。
「こんな・・・・・・」
父も兄も瞳の色は赤である。アズムール王やクルト王子は黒だったという。これはバーハラ王家の色だ。左の瞳はどの色でもなかったのだ。
「御父様、これは・・・・・・」
「その瞳の色を御前はよく知っている筈だ」
アルヴィスは顔を俯けて言った。ユリアから顔を背けている。
「あっ・・・・・・」
すぐに悟った。この瞳の持ち主を。それはいつも自分を包んでくれた心優しき騎士の瞳であった。
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