第三十八話 夏になってその二十一
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「人間親切にしてもしてあげたってなりますから」
「そうよね」
「僕もそう思いましたし」
「親切にした人に何かされてね」
「してやっただろ、ってなるんで」
「それはね」
「はい、よくないですね」
反省している顔での返事でした、昔何かあったのでしょう。それで阿波野君もそうしたお顔になっていると思いました。
「やっぱり」
「そうよね」
「恩知らずとか思ったり」
「させてもらってるの、それにね」
私も言いました。
「その人に自分が気付かないうちに何かしてるかも知れないし」
「そうですよね」
「だから思わないの」
こうお父さんとお母さんに言われてきました。
「気をつけてるの」
「いいことですね」
「ええ、けれど本当によ」
私は阿波野君に注意する様に言いました。
「続けてね」
「はい、立派なようぼくを目指します」
阿波野君はとても素直な笑顔で応えてくれました。
「大学目指しますしね」
「天大ね」
「そこに入ってからも頑張って」
「教会長さん目指すのね」
「神戸のことも勉強しておきますね」
「何でそこで神戸なの?」
私が生まれ育って実家もある場所ですが。
「それが意味不明だけれど」
「いえいえ、こっちの事情で」
「奈良にいるでしょ」
「奈良でもですよ」
「そこでそんなこと言うのがわからないわ」
結局最後は訳のわからないやり取りになりました、不思議なことにこうした時阿波野君はじっと私を見ています。このこともわからないことです。
夏になって 完
2016・9・22
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