第四十三話 あえてその場所にその十
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「他のお仕事を選ぶしかなかったわ」
「そうだったのね」
「何をしていたかわからなかったわ」
「お医者さんになれなかったら」
「そう、本当にね」
「お父さんとお母さんがいなくなって」
「諦めかけたのはそのせいだったのね」
金銭のことで不安があったからだ。
「それがどうにかなかったからね、けれどよかったわ」
「お医者さんになれて」
「そして貴女と一緒にいられて」
「私と」
「だって家族なのよ」
このことからだった、優子が優花に強い想いがあるのは。
「貴女が産まれた時から一緒にいる」
「女の子になっても」
「そうよ、その時どうしていいかわからなかったけれど」
優花の性別が変わると聞いた時のことを今も思い出している、本当にこの時は優子にとって苦しい時だった。
「今の選択を選んでよかったわ」
「私と一緒にいることを選んで」
「そう、よかったわ」
本当にというのだ。
「若し貴女から逃げたり見捨てていたら」
「その時は」
「本当に私はここにもいなかったし、貴女の姉でも何でもなくなっていたわ」
「姉さんなのに?」
「そう、血縁だけでなるものじゃないでしょ」
姉と弟、この絆はというのだ。
「こうしたことは」
「それじゃあなるのは」
「そう、心のことだから」
「その心が切れていたら」
「私が私でもなくなっていたわ」
「そこまでだったの」
「ええ、人から逃げたり裏切ったりしたら」
そうしたことをしたならばというのだ、ましてや自分の肉親をだ。
「それは自分自身も切るものだから」
「そうなの」
「人を裏切る人は信頼出来ないでしょ」
「ええ」
このことは優花も同じだった、そうした人間を信用出来る筈がなかった。
「そうした人は」
「それは誰でもよ」
「それでなの」
「そう、よかったわ」
心からだ、優子は言っていた。
「今ここにいられて」
「私と一緒に」
「よかったわ」
こう優花に言った、この言葉が終わるとだった。
龍馬が来た、龍馬は優花の横の席に座ってまずは二人に挨拶をしてそのうえでこんなことを言ったのだった。
「今日は飯食ったら」
「ええ、お話をするわ」
優子が龍馬に答えた。
「今度の日曜のことでね」
「そうですよね」
「そしてね」
「そして?」
「私達もどうするかよ」
龍馬にこうも言ったのだった。
「一体ね」
「はい、その為に来ましたから」
「優花の為に何が出来るか」
「それですね」
「そして何をしたら一番いいか」
こうもだ、優子は言った。
「そのことを考えてね」
「何をするか決めるんですね」
「もう通報はしたらしいけれど」
メールの件をだ。
「警察はこうした時はすぐに動けないわ」
「少なくとも日曜まではですか」
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