207部分:魔皇子その五
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魔皇子その五
セリスも負けてはいなかった。剣技においても突出した才を見せシャナンと肩を並べる程の腕を持つだけはあった。ユリウスの激しい攻撃をかわし攻撃を出し続けている。何時しか二人の顔は汗で濡れ闘気で場を熱していた。
「くぅっ、流石にしぶといな」
ユリウスは腹立たしげに呟いた。
「だがそれも終わりだ。今度こそ決着を着ける」
そう言って気を溜める。その時だった。ユリウスの動きが止まった。
「ガッ・・・・・・」
瞳がカッ、と見開かれた。顔が割れた様にバラバラの表情になった。
「ガガガ・・・・・・」
急にしゃがみ込んだ。そして何やらもがきはじめた。
「グ、ググググゴ・・・・・・」
「!?」
突然のことにセリスも呆然とした。もがくユリウスの全身から急激に邪悪な気が消えていくのがわかる。
「で、出るな・・・・・・」
ユリウスは呻く様に言った。声がしわがれたものだけになっている。
「出て来るな・・・・・・」
両手を地に着け肩で息をしている。振り乱した髪は散り散りになり気も霧消してしまっている。
「セリス皇子・・・・・・」
キッ、と見上げる紅い瞳は人間のものになっていた。爪も血の様な赤から普通の赤色になっていた。
「今日の勝負はお預けだ。だが覚えていろ、必ずや主の首、喰ろうてやる」
そう言い残し黒い渦の中に消えた。
「ユリウス様・・・・・・クッ!」
それを見たイシュタルもワープで姿を消した。
「あっ、待て!」
イシュトーの言葉だけが残った。二人は何処かへ消え去ってしまった。
「セリス皇子、イシュトー王子、ご無事ですか!」
扉が開いた。コープル達が入って来た。
「うん。ところでそっちは?」
「全て片付けた。それにしてもどうしたんだ?顔色が悪いぞ」
アレスが心配する。
「やはりユリウス皇子ですか・・・・・・」
セティも心配している。
「うん、恐ろしい相手だった。イシュタル王女と一緒に何処かへ行ってしまったみたいだけどね」
「そうですか・・・・・・。しかしチャンスはまだあります。焦る必要はありません」
コープルが言った。
「そうだね」
けど、とセリスは思った。扉の向こうからオイフェや仲間達の声がする。
(何故あの時ユリウス皇子から魔力が消えたのだろう。闇魔法と何か関係があるのだろうか・・・・・・)
暫く考えていたがすぐに仲間達の中にはいった。そして戦後処理に忙殺され記憶の片隅に追いやってしまった。
ミレトス城攻防戦は解放軍の勝利に終わった。攻略に三日をようし苦戦であったが慎重な進撃が功を奏し被害は極めて軽微であった。主立った将達に負傷者もなく完全勝利と言えた。だが暗黒教団とユリウス皇子の戦法と力は解放軍にとって新たな脅威であることを認識させた戦いであった。
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