British Rhapsody 〜赤城〜
Apology and Greeting
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「ロドニー」
「ん?」
「本国からの通達だから、心して見てね?」
「わ、分かった……」
いつになく真剣に、提督がそう告げた。そんな提督の雰囲気に飲まれたのか、ロドニーさんは生唾を飲み込み、テレビの前に座る。
「再生します」
厳かな大淀さんの声が響き、テレビにうつるマウスの矢印が動画ファイルを再生させた。大淀さんが画面一杯に動画を映し出す。提督が腕を組み、難しい表情でそれを眺めた。
5秒ほど真っ青な画面が続いた後、急に画面が切り替わる。誰かのホームビデオのような雰囲気だ。どこかの建物の応接室のようなところなのだろうか。深い茶色の、年代物のソファが置いてあるのが見て取れる。
「……本国の海軍施設だ……姉さんの……執務室だ……」
ロドニーさんがハッとしていた。ネルソン級戦艦一番艦……つまりロドニーさんのお姉さん、ネルソンさんの執務室とのことだ。
「姉さん……」
ロドニーさんの眼差しが変わった。懐かしくてうれしいような……それでいて泣いてしまうほど悲しいような……目に涙をいっぱい溜めた彼女は、じっと、静かに、その映像を見ていた。
ガタガタッという音とともに画面が少し揺れ、一人の女性が映り込む。オフの時のロドニーさんと同じく、綺麗な長い金髪のその女性は、ロドニーさんによく似た顔をしている、太陽のように眩しい笑顔がよく似合う女性だ。ロドニーさんより少し背が高く、表情が豊かで朗らかな、とても可愛らしい雰囲気が見て取れる。着ている服は向こうの海軍の制服だろうか。黒いスーツの胸元には勲章のようなものがいくつかついている。非常に厳かな服だが、不思議と、笑顔のこの女性によく似合っていた。
『ハーイ、ロドニー!!』
「姉さん……お久しぶりです……」
『久しぶりだね〜』
なぜか日本語で話しかけてくる、動画の中のお姉さん。ロドニーさんも、そんなお姉さんに日本語で話しかけていた。お姉さんは満面の笑みで、私たちに小さく手を振ってくれる。
『そして日本のチンちゅフの皆さんハジメマシテ! 妹がいつもお世話になってます! 私はネルソン級戦艦一番艦、ロドニーの姉、ネルソンといいまーす』
『球磨だクマ〜』『電なのです〜』『戦艦棲姫だ。キリッ』と口々にみんなが不規則発言を発していく。しかしこのネルソンさんとか言う人、見た目はロドニーさんそっくりなのに、雰囲気が全然違うな……。
『ロドニー?』
「……」
『帰りたくないんだって?』
お姉さんはそういい、画面を覗き込んできた。眉間を八の字型にし、不思議と、画面を見るロドニーさんの目をしっかりと見ているような……妹の身を案じてるお姉さんって、きっとこんな表情をするんだろうな……そう思わずにはいられない顔だった。
『……変わったね』
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