British Rhapsody 〜赤城〜
Apology and Greeting
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は柔らかく、話す相手のことを精一杯気遣っている様子が聞き取れる、とても聞き取りやすく優しい声だ。表面上は。
だが、私は感じる。冷たい……彼女の声の中枢は、極低温でとても冷たい。その声質は、表面上の優しさとはまったく違う感覚を、私の生存本能に届けた。
『彼女は怒っている』。私の生存本能が反応した。ここにいては危険だと、ネルソンさんとの接触を全力で避けろと警報を鳴らした。顔を見るなと全力で叫んだのだ。
故に私は、ロドニーさんに対する怒りが潮が引くようにサッと引き、恐怖で画面を見ることができなくなった。見てしまうと、なんだかネルソンさんのお怒りに触れてしまうのではなかろうか……そう思ってしまった私は、画面の方向を見ることができなかった。
ネルソンさんの声を聞き、ロドニーさんは意識を取り戻したようだ。さっきまで白目だった眼差しが元に戻り――でも恐怖で焦点が合わないみたいだけど――ピクピクと痙攣していた身体をなんとか持ち直して――でも恐怖で身体が震えているけど――急いでテレビ画面の前に立って、画面をガッシと両手で掴むと、まるでホラー映画鑑賞中の天龍さんのような声で、画面の中のネルソンさんに対して全霊で訴え始めた。画面をガクガク揺らしながら訴えているが、よほど恐ろしいのか、その手に力が全くこもってないのが、私から見てもよくわかる。
「ま、まさか姉さん……本当に……!?」
『……』
「嘘だと言ってください姉さん!! イヤだ……あれだけは……私はイヤだ!!」
ここで、画面がチラッと視界に入った。ひょっとすると角度の関係で、全員の中で画面が見えたのは私だけかもしれないが……私にはそのテレビ画面のネルソンさんの顔がはっきりと見えてしまった……。
『ロドニー?』
「は、はい姉さん……」
この時のネルソンさんの顔を、私は生涯忘れることはないだろう。
まだ戦争中だった頃……私は一度だけ、深海棲艦さんたちの一人、“レ級”さんの資料を見たことがある。たった一人でひとつの艦隊に匹敵する実力の持ち主というレ級さんは、戦闘中の写真であるにもかかわらず、凶暴な笑みを浮かべていた。
『楽しみだね』
「……」
『………………稽古』
「姉さ……ん゛ッ!?」
その時のネルソンさんの顔は……私が資料で見た、レ級さんを彷彿とさせる、凶暴な微笑みを浮かべていた。勝利のみを追い求めた、当時の永田町鎮守府の最強布陣の艦隊に対して、たった一人で致命的なダメージを絶え間なく与え続け、そして撤退せしめた時の、あの資料の中のレ級さんの、獰猛な微笑み……見ているだけでこちらの背筋を液体窒素で凍らせるような、恐怖の具現化……
『それじゃあチンちゅフのみなさーん!』
「あばばばばば」
『お会いできる日を楽しみにしてますねー!
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