201部分:二本の槍その三
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二本の槍その三
「アリオーン様もようやくご自身の本来の場所に来られました。これでレンスターとトラキアの長い憎しみと戦いの歴史が幕を降ろすでしょう」
“うむ”
ハンニバルは後ろの男に語った。頷いた声は深緑の長い髪を持ち軍服に身を包んでいた。ただ普通の者と異なることがあった。その体は半透明であり何かしら口で話しているようには聞こえなかった。
“わしは戦いしか知らなかったし出来なかった愚かな男だ。その様なわしにあの二人は過ぎた子供達だった。あの者達はわしと同じ道を歩んではならんのだ。アリオーンもそれはわかっていた筈だ。だが回り道をしてしまった”
「ですがアリオーン様もご自身の道を歩き出されました。かってダインとノヴァが歩いた道を」
“わしは二人の道程をヴァルハラで見ている。ハンニバルよ、御前は二人を見守り力になってやってくれ”
「御意。いずれ私も行きましょう。陛下、その時まで巨人達やワルキューレを相手に槍を思う存分振るっていて下さい」
“フッ、言われずともやっておるわ”
「そうでしたか」
二人は笑い合った。それは主君と臣下のものというより戦友同士のものであった。
“ではな。わしはもう行かなくてはならぬ。二人を頼んだぞ”
「はい。陛下もヴァルハラでご武運が尽きませぬよう」
“うむ。御前もな。ではまた会おう”
「はい」
トラバント王は空へ戻って行った。そしてそのまま消えて行った。ハンニバルは空を見上げトラキアの敬礼で見送った。
アリオーンとトラキア竜騎士団を新たに加えた解放軍はかねてからの計画通りユリウス皇子がいると思われるミレトス城へ進軍をはじめた。ミレトス城攻略は選りすぐりの精兵と主立った将で行なわれる事が決められ他の将兵達はミレトス各地の解放及び暗黒教団掃討に当てられた。
アリオーンは解放軍に入った次の日の夜自分の天幕から出て一人空に瞬く星達を見上げていた。
空には無数の星達が煌いていた。紅く輝く星もあれば蒼く輝く星もある。緑の星、白い星、黄色い星、星の数だけその色はあった。その大きさも輝きもそれぞれだ。だが共通している事が一つあった。美しく輝いているという事だ。アリオーンはその美しき星達を無言で見ていた。
「あの・・・・・・」
声がした。そちらへ振り向いた。そこには茶の髪をした少年がいた。
「君は確か・・・・・・」
アリオーンが言おうとするとその少年が先に言った。
「リーフです。レンスターのキュアンとエスリンの子です」
「・・・・・・・・・」
アリオーンは彼が何を言わんとしているかわかっていた。だが止められなかった。
「貴方の父を倒した男です・・・・・・」
頭を下げた。夜の闇の中でも身体が震えているのが見えた。
「構わん」
アリオーンは言った。
「え・・・・・・!?」
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