200部分:二本の槍その二
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二本の槍その二
次の日の午後砦外の広場において両軍の諸将及び兵士達の見守る中アリオーンとアルテナは飛竜に乗り対峙していた。両者共手には槍が握られている。
「また一騎打ちになるとはな。血は逆らえないというのか」
グレイドが苦渋の顔で言った。立会人を務めるセリス、シャナンの顔も暗い。
「どちらか、あるいは御二方共倒られる事になれば・・・・・・。トラキアの、陛下の御遺志は潰えてしまう」
ハンニバルは少し離れた場所で闘いがはじまろうとしているのを見守っていた。
「しかしもう止められぬ。御二方共一度決められた事は決して変えられぬ。もう手遅れか・・・・・・」
(ハンニバルよ、案ずる必要は無いぞ)
その時後ろから声がかけられた。思わず振り返った。
「貴方は・・・・・・」
そこにはハンニバルが最もよく知る男がいた。その者は彼に対して微笑んだ。
「始め!」
セリスが言うと両騎共同時に上へ飛び上がった。すぐに槍が撃ち合わされる。
アリオーンが槍を突き出す。トラキアの戦いにおいて見せた父親譲りの凄まじい腕である。
アルテナも負けてはいない。流星群の如く繰り出されるアリオーンの槍を的確に防ぐ。
反撃に転じた。アリオーンの頭へめがけ雷の様な一撃を振り下ろす。だがアリオーンはその一撃を見事に受け止めた。
グングニルが横に払われる。その一振りで幾人もの兵士を両断した恐るべき一振りである。
アルテナはそれをこちらからもゲイボルグを横に振りその一撃を弾き返した。相当な膂力と技量が無ければ到底出来る芸当ではない。流石である。
百合を越えそれでも撃ち合いは続く。両者は疲れの色なぞ全く見せず槍を繰り出し合う。
日が暮れた。地に篝火が焚かれ空には飛兵達が松明を持ちその照らす中で闘いは続けられた。濃紫の空には様々な色の星が輝きその下で二人は闘った。
死闘は休む事無く続いた。闘いがはじまり既に半日が過ぎようとしていた。
両者の姿が松明の灯りの中照らし出されている。その白い顔が松明の炎の赤い灯りにより朱に染まって見える。
アリオーンのその朱の顔が一瞬ピクリ、と動いた。アルテナの左肩へ槍が斜めから思いきり振り下ろされた。
アルテナはその穂先を自身の槍の穂先で絡め獲った。両者の動きが一瞬だが止まった。
槍を絡めたまま横に振った。アリオーンの手から槍が離れた。
槍を再び掴もうとする。だが遅かった。槍尻が円を描いた。
アルテナの両手に凄まじい衝撃が襲い掛かる。だが手を強く握り締めその衝撃に耐えた。振り切った時穂先に絡めていたグングニルが弧を描き外れ落ちた。
槍は回転し風を切りながら落ちて行く。グングニルが地に刺さった時ゲイボルグはグングニルの主の喉元に突き付けられていた。
「うっ・・・・・・」
アリオーン
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