MySword,MyMaster
Act-3
#3
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宝具。
棍棒はいつの間にか掻き消え、代わりにライダーの右手には、手綱と思しき紐が握られていた。それは、知らぬ間にそれと繋がれた、奇妙な幻影を作り出す。
馬だ。人と、竜と、それから魚。あとは、鳥。様々な生物の幻影が蠢くが、その本来の姿は馬で在るように思えた。
幻想的、しかしどこか不気味なそれに、ライダーがまたがる。
――直感的に、グレーシャは叫んでいた。
「セイバー、防御を!」
直後。セイバーが、ランサーとの初日の戦闘で見せたのと同じ、魔力放出による障壁を張るのと、ほぼ同時。
星が、啼く。
大気が、叫ぶ。
ライダーをのせた夢幻の馬は、一筋の流星の様に昇華され、戦闘の舞台となっていた公園の木々を吹き飛ばしながら、セイバーと激突した。
魔力放出の壁によるダメージの減衰と、彼の宝具たる『無窮の栄光』の効果によって、即死は免れたようだが――一瞬、凄まじいまでの破損が、彼の鎧に与えられたのを見た。
グレーシャはこの時、この聖杯戦争において最初に、セイバーの耐久ステータスがA+という非常に高いランクであったことに感謝した。
それによって、彼は何とかして宝具の直撃を受けても生き残ることができたのだから。
ライダーはそのまま、星の馬に乗って何処へと去った。後に残ったのは、これまでのように暴走の終焉による霊基の軋みではなく、戦闘ダメージによって膝をつくセイバー。
「すまない、マスター……少し、霊体化する……」
「大丈夫です。お疲れさまでした、セイバー」
「悪い……さすがに宝具直撃は、少し堪えたな――」
セイバーはグレーシャが近づくと、罅割れた声でそう言った。グレーシャが許可を出すとすぐに霊体化するセイバー。仕方あるまい。むしろ、宝具の直撃を耐えきった、という点で、セイバーの圧倒的な戦闘能力が再評価出来たレベルだ。
グレーシャは拠点へと戻りながら、今日の戦闘を回想する。
どうにもライダーは様子見、というか、セイバーとできるだけ打ち合い、あわよくば撃破――という戦法を立てていたように思う。
セイバーの戦闘能力は、間違いなくこの聖杯戦争で最強クラスだ。抗し得るのはバーサーカーとランサーだけ、と思われる。
だが、他のサーヴァントへの警戒も怠ってはならない、と、グレーシャは強く心に刻みつけた。
敗退は、許されない。というより――自分自身で、それが、許せなかった。
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