199部分:二本の槍その一
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二本の槍その一
二本の槍
高くそびえ立つ岩山の上を飛ぶ飛竜の一群があった。その数二万、一糸乱れぬ見事な動きで南西へ向かっていた。
飛竜の背には騎士達がいる。どの者も武装しその手には剣や槍がある。
風にたなびく軍旗はトラキアの軍旗である。赤褐色の下地に黄のグングニルが中央に配されている。かって大陸中に怖れられ憎まれた旗である。
軍の先頭には深緑の髪の若者がいる。トラキアの後継者にして十二神器の一つグングニルの所有者アリオーンである。その手にはグングニルが握られている。
アリオーンは竜を駆りながら南西を見ていた。そこには目指す目標があった。
「シアルフィ軍、今度こそ」
エッダから発ち長躯ここまで来た。狙うは敵将セリスただ一人である。
「セリス皇子、か」
敵将だというのに不思議と敵意は感じなかった。むしろ好意すら覚える。彼にとってシアルフィ軍は最早敵とは感じられるものではなくなっていた。
「アルテナ・・・・・・」
ふと今は敵同士となっている妹の名が口から出た。憎しみなどあろう筈がない。だが今は刃を交えねばならないと考えていた。
「己の星に従え」
バーハラからエッダへ向かう時に皇帝から言われた言葉だ。耳から離れない。
「私の星・・・・・・。天騎士ダインの星か」
フッと笑った。何故だかわかったような気がした。
「ならば向こうから来るだろう。運命という因果の輪を断ち切りにな」
そう言った直後だった。前から一騎の竜騎士が飛んで来た。
「来たか」
来たのはノヴァの娘だった。聖戦において共に戦い共に国を建てたダインとノヴァ。その後袂を分かち血を血で洗う抗争を百年に渡って繰り広げたその子孫達。父と母を騙し討ちにしながらその娘を育てた我が父。育てられたかって妹と呼んだ娘。そしてその弟と彼に倒された父????。多くの者が倒れ傷付き血と涙をトラキア半島に流した。
「だがそれも幕を降ろす時が来たのだ。ダインとノヴァの血の歴史が」
アルテナが目の前に来た。アリオーンは全軍を停止させた。
「久し振りだな、アルテナ。元気そうで何よりだ」
アリオーンは微笑みながら言った。アルテナはそれを口を真一文字にして聞いている。
「どうしたのだ?私に何か用があって来たのだろう、黙ったままではわからないではないか」
「・・・・・・兄上はもうわかっておられる筈です。ご自身が何を為さるべきかを」
「何をだ?」
あえてとぼけてみせた。彼女の口から言わせたかったからだ。
「ダインとノヴァは実の兄妹でした。兄と妹が争ってきたトラキアとレンスターの歴史を今終わらせなければいけません」
「・・・・・・・・・」
「父上、いえトラバント王はもういません。帝国も今その灯火を消そうとしてお
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