第三十三話 落ちる薔薇その四
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「是非」
「わかりました、それでは慎重に選びます」
「新教徒であることですね」
キャスリング卿も言ってきた。
「やはり」
「その通りですね」
「旧教徒は残念ですが」
「迎えられないですね」
「そうなります」
キャスリング卿の言葉にはいつもの歯切れよりも強さが宿っていた、そこはどうしてもという譲れないものを含んだが為に。
「そのことはご了承下さい」
「己の好みは考慮されない」
マリーは一旦目を閉じてからあらためて述べた。
「それが王家の婚姻だからこそ」
「そうなります」
「わかっています」
「まだ未婚の方になりますので」
最後にデューダー卿が言ってきた。
「どの方にされるかはすぐに決まるかと」
「力があり資質も人格もある方になりますと」
「はい、限られてきますので」
諸侯であるという時点でだ、この国の全ての者を対象としてはおらずそこからしかも旧教徒は除外すると、となるとだ。
「すぐに決まるかと」
「相手自体は」
「そしてその方と」
「結ばれて」
「それからも王家そして国の為に尽くされる」
「そうなりますね」
「是非共」
こうマリーに言う、マリーも頷いてだった。
婚姻のことを進めていった、このことは旧教徒の者はないということが天下に広く知れ渡った。当然太子の耳にも。
だが太子は今はこのことについてはだ、無念の顔で言うだけだった。
「今はそんなことはどうでもいい」
「はい、それよりもですね」
「お妃様ですね」
「あの方のことですね」
「日増しに酷くなってきている」
その病がというのだ。
「遂に一日の殆どを床で過ごす様になった」
「それではもう」
「あの方については」
「最早、ですか」
「お命は」
「覚悟はしている」
またこう言うのだった。
「実際はマリー王女についてもだ」
「我がロートリンゲン家からですね」
「迎えられないのなら」
「どうでもいいとですね」
「そう言うしかありませんね」
「マリー王女は旧教徒を夫としないと言った」
太子はこの言葉を出した。
「それも国内の新教徒だ」
「それならばですね」
「我々からは伴侶を出せませんね」
「ロートリンゲン家からは」
「縁戚の家からも」
「縁戚は全て旧教徒だ」
ロートリンゲン家のそれもというのだ、伊達に旧教の擁護者として皇帝になっている訳ではない。
「それではだ」
「とてもですね」
「我々はあの方の婚姻には関われませんね」
「残念ですが」
「だからこう言うしかないですね」
「そうだ、残念だが」
本音はロートリンゲン家の為にマリーの夫となる者を家から出したい、しかしマリー自身がそう言ったからにはだ。
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