巻ノ七十八 打たれる手その五
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「戦の用意を」
「はじめるとするか」
「治部殿はかなりの兵を集めてくれましょう」
兼続はそう見ていた。
「毛利殿を担がれて」
「それに宇喜多殿もじゃな」
「五大老のこの両家を担ぎ」
そしてというのだ。
「動かれましょう」
「そういえば治部はな」
景勝も彼のことを知っていて言う。
「毛利家の重臣安国寺恵瓊殿と懇意じゃな」
「その恵瓊殿からです」
「毛利家が動くか」
「はい」
そうなるというのだ。
「あの家も」
「そしてそれと共にじゃな」
「この両家が動きますと」
五大老の二つの家がだ。
「他の家もです」
「動くな」
「内府殿に対抗出来るだけに、それに」
「それに、か」
「今は静かですが刑部殿も」
大谷、彼もというのだ。
「あの御仁も」
「治部につくか」
「そうかと」
「そうか」
「刑部殿はわかっておられます」
ここでだ、兼続は少し残念そうに言った。
「天下がこのまま進むとどうなるか」
「内府の天下じゃな」
「そうなると見ておられ」
「そして治部はじゃな」
「あの御仁は生きにくい方です」
そうした者だというのだ。
「自分から勝手に窮地を作っていく」
「平壊者故にな」
「心根はまっすぐで淀みはないですが」
その心根を知っているからこそだ、兼続も彼と親しく付き合っているのだ。裏表のない男だとわかっているからこそ。
「しかしそれがかえってです」
「よくないな」
「はい、ですからこのままでは」
「治部は死ぬ恐れがあるな」
「無闇に」
「そのこともわかっておられ」
そしてというのだ。
「刑部殿もまた治部殿にはです」
「強い絆を感じておるな」
「恥をかくところを助けられていますし」
茶室の時にだ、まさに。
「ですから」
「余計にじゃな」
「治部殿を見捨てておけませぬ」
「だからか」
「はい、あの方もです」
「治部についてか」
「立ち上がられます」
確実にというのだ。
「そして豊臣家の天下もです」
「このままである可能性も高いな」
「まだまだ」
「そうか、刑部も加わるとなると」
「それは余計にです」
「勝てる戦なら行う」
景勝は言った。
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