190部分:光を奪われてその三
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光を奪われてその三
「何っ!?」
粉々に砕けたステンドガラスが青や緑の光を撒き散らす。シスターはそのまま下へ飛び降りる。
「馬鹿な、ここは三階だぞ、無事で済む高さでは・・・・・・」
オイフェの言葉が言い終わらぬうちにシスターの下に黒い渦が生じた。彼女はその中に消えていった。
「ワープ、か・・・・・・」
「いえ、あんな黒い渦はワープの魔法では生まれません。おそらく暗黒魔法の一つです」
コープルがオイフェに言った。その額からは汗が滲んでいる。
「セリス様、オイフェさん、お怪我は?」
シャルローが杖を手に駆け寄る。
「有り難う、大丈夫だよ」
二人は微笑んで言った。
「それにしても・・・・・・」
セリスは砕け散った窓を見つつ言う。
「いきなり刺客を城内まで送り込んで来るとはね・・・・・・。暗黒教団、やはり厄介な相手みたいだね」
「すぐに諸将を集めましょう。早急に対応策を立てねばまたこのような事態が再び起こります」
「そうだね」
それからすぐだった。市街地の至る所で解放軍の将達が謎の刺客達と戦闘状態になっているとの報が入ったのは。セリスとオイフェはその対応に追われ城内を駆け回った。そして一瞬、そう一瞬だった。忘れてはならない事を忘れていたのは。
「美味しい」
ユリアは苺とオレンジにシロップをかけ蕎麦粉で焼いた皮で包んだ菓子を食べながら店の椅子に座ってオイフェを待っていた。
「昨日は楽しかったなあ」
ユリアはオレンジを口にしながら昨日の夜の事を思い出していた。オレンジのすっぱさとシロップの甘さが口の中に広がる。
昨日解放軍の面々は酒についてとかく口煩いオイフェを黙らせる為にオイフェが絶対の忠誠を捧げるセリスを引き込もうと画策した。当然オイフェは猛反対した。だが酒というものを知らずまた誘いを断らない心優しいセリスはその誘いに乗った。
やがて心配になって店に来たオイフェが見たのは店中に詰まれた酒樽と魚や肉の骨、野菜や果物の皮、そして戦死した解放軍の虎将達の中平気な顔で飲み食いを続けるセリスとユリアの姿だった。
その光景のあまりの凄まじさに愕然とするオイフェにセリスは言った。
「お酒ってジュースと同じものの名前が違うだけなんだね」
シアルフィ家の者は代々酒に極めて強い事で知られていた。セリスもその血を引いていたのだ。
「セリス様ってお酒強かったんだあ。知らなかった」
ちなみにユリアはセリスと同じ位飲み食いしている。だが小さい。不思議だと誰もが言う。今もよく見ればずっと食べている。
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