第百二十五話
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束を入手していた。
「さ、早く行きましょ」
「ああ、こっちだ」
花束を握るリズを先導しながら、二人であの浮遊島に向かっていく。目的を達成したことで、先程まで重力のように身体を覆っていた疲労が、やり遂げた心地よさに変わっていく。
「…………」
あの日、ユウキとデュエルの決着をつけるべく、浮遊島に急いだ記憶が呼び覚まされる。結局、決着がつくことはなく、デュエルは終焉を迎えてしまった。
もちろん、決着がつかなかったことを惜しむ気持ちはある。ただそれ以上に、ユウキの「決着をつける」という願いを叶えてやれなかったことが、俺の心に強くのしかかっていた。
「ショウキ! あれ……」
無念に目をつぶっていたからか、その「変化」に気づいたのはリズが先だった。遅ればせながら俺もソレに気づきながらも、ひとまずは例の浮遊島に着地する。
――そこにあったのは、足の踏み場もないほどの、花、花、花。ユウキがマザーズ・ロザリオの秘伝書を隠していた大木以外には、何の変哲もなかったはずの浮遊島は、供えられた花束でいっぱいになっていた。
「そうか……花屋が品切れになってたのも……」
「……みんな、考えることは一緒ってわけね……」
その花束の目的が何であるかは、今更考える必要もない。この世界で生きていた《絶剣》ユウキへの献花――現実世界の紺野木綿季の葬式に参加することは出来ずとも、こうして祈りを捧げることは出来るのだから。
「リズ」
「……うん」
その末席に、俺たちは二人で花束を供えていく。俺たちは大丈夫だと、そんな意志を込めて。
「あ……」
そうして立ち上がった瞬間、一際強い強風が浮遊島に吹いた。その旋風は供えられた花束を撫でていき、花びらを巻き上げて空に巻き上がっていく。
「……ありがとう」
もはや翼を使っても追いつけないほど、遥か遠い空に楽しげに舞い上がっていく花びらを見ながら、俺は無意識に――そう呟いた。
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