第百二十五話
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のか?」
「だからよ。店売りのものより、冒険で手に入れた方がユウキも喜ぶわ」
「……なるほど」
脳裏に焼き付いたユウキの姿を思い出すと、確かにリズの言っていることも、あながち冗談だと一言には切り捨てられず。こちらが納得したような様子を見せると、リズは満足げな様子を見せつつも、どこか遠くを仰いでいた。
「冒険して見つけた花を供えて、ユウキに言ってやるのよ。あたしたちはまだ、ここにいるってね」
「ああ見えて心配性だからな。そうでも言っておかないと、心配で帰って来ちゃいそうだ」
「そういうこと! ……で、実際、見たことある? これ?」
ユウキにいつまでも心配されないように――という思いが共通して、お互いに軽口を叩き合った後、俺の手のひらの中にある花びらを見る。こちらより身長の劣るリズにも見えるように、少しだけ手を下げて二人で花びらを見下ろすものの、お互いどうにも望んだ答えを得られそうになかった。
「ないな……リズは?」
「あたしも……ちょっと」
どちらも記憶を探ってみるものの、とんとその桜のような花びらに覚えはなかった。原因は、最近このALOは現実と同じように春の気候に移行したばかりのため、動植物も新たに芽吹いているからだ。これが浮遊城の中であれば、文字通りに昔取った杵柄があるのだが、あいにくとここはALOのエリアだ。
しかもただのALOのエリアではなく、新生ALOになるにあたって開発された、浮遊城との境たるイグドラシル・シティ。眼下に臨む旧ALOとはまた違う、独自の気候を備えている。その上、かなりの広さもあるという、分かりやすいお手上げだった。
「花壇……っても色々あるわよねぇ、この街だけでも」
「プレイヤーメイドの花屋も含めたら更に、だ……というか」
そんな事情もあり、花が咲いているところを総当たりなどとやっていれば、日が暮れてしまうことは安請け合いだ。どうするか考えている間に、ふと、ある可能性に行き着いた。
「……誰かの花壇から零れてきた花びらだったら、その花を供えられなくないか」
「…………余計なことまで考えすぎちゃうのは、あんたの悪い癖よ。ショウキ」
「ほっとけ、自覚してるから」
盛大なリズの話題そらしはともかく、見つけてもいないのにそんな盛り下がることを考えるな、というのは一理ある。もう一度花びらを見つけた後、その花びらが飛んできた方向を確認する。
「あんた風魔法使ってるでしょ? 風の軌道とか読めないの?」
「今やってる」
「まあ、そうよねー……やってるの!?」
――もちろん、無理だ。強いて言えば、風魔法によって発生した風ならまだ分かるが、それはあくまで自分の魔法によって発生した風であって。強風にあおられ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ