第百二十五話
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のか――という決意を込めて。
「俺は絶対、お前を残していなくなったりしない」
「……当たり前でしょ」
小さく、小さくリズはそう呟いて、クルリと回りこちらに背を向けた。ただし相手から目を背けるのは今度はこちらの番で、照れ隠しにコーヒーを飲み干しておく。
「ほら。そんなことより、花でもお供えに行ってやりましょうよ」
「……花?」
そうして照れ隠しで飲んだコーヒーカップをストレージにしまっていると、すぐにリズがこちらに振り向いてきた。怪訝な表情を見せているだろう俺に対し、リズは普段通りの笑顔を見せながら、指を一本立ててみせた。
「現実世界の方だけじゃなく、こっちにも花を供えてやった方が、ユウキは喜びそうかなって」
「なるほど……早速行くか」
「ええ! 湿っぽい話をしてるより、花で送ってあげましょ!」
そう朗らかに言ったリズに背中を叩かれながら、店員NPCに留守番を頼みながら二人でリズベット武具店から出て行く。外は相変わらずの風の強さで辟易してしまい、コートを強めに身体に引き寄せる。
「リズ、寒くないか?」
「うーん……ちょっと待って、コート出すかひゃっ!?」
普段からコートを羽織っているこちらはともかく、エプロンドレスのリズには堪えるだろうと隣を見ると、すでにストレージを漁っていた。そして赤色を基調とした新品のコートを取り出した瞬間、リズはその場でいきなりのけぞっていた。
「……どうした?」
「そんな変な目で見ないの! なんか飛んできたのがぶつかって……」
取り出したコートに袖を通しながら、不可視のモンスターが現れたのような様子で、リズが周囲をグルグルと見回している。とは言っても、周りにはNPCやプレイヤーしかいない訳で、むしろ変な目で見られる可能性の温床だった。
「あ……リズ、ちょっと動くな」
「え? ちょっ……」
そんな不審な行動をしている彼女の肩を掴んで止めると、リズの頬についていたピンク色の何かを取った。どうやら強い風に吹かれて飛んできたらしく、俺の手に置かれたソレを見て、リズも先程に何が起きたか察したらしい。
「こいつが飛んできたってわけね……何、それ」
「花びら……みたいだな」
指についたソレをよく見てみれば、現実世界で言うところの桜の花びらのようで、綺麗な薄いピンク色をしていた。俺の手のひらの上に置かれたソレをまじまじと見るリズの表情に、何かろくでもないことを考えたような感情が浮かんでいた。
「……リズ」
「この花びら、どこから来たか探さない?」
先んじて何か言おうとしたリズを制しようとしたものの、それは叶わず謎の思いつきがリズの口から放たれた。
「ユウキに花を供えに行くんじゃなかった
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