British Rhapsody 〜赤城〜
Confession
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――ありがとう もう心残りはない
……
…………
………………
心地よい温かさが身体を覆っている。はじめは全身の傷に染みて痛みが強かったが、それも次第になくなってきた。ちゃぷちゃぷという水の音が耳に届く。
「……アカギ」
誰かが私の名を呼んだ。ずっとこの心地良いぬくもりの中でたゆたっていたい。だから声の主には、もう少し待っていてもらおう。私は視界を遮ったまま、返事をせずにしずかに佇んだ。
「起きろアカギ。気がついたんだろう?」
静かにして欲しい。私はこの心地よいぬくもりの中で、もう少し眠っていたい。気にせず、私は目を閉じたまま、お湯の温かさの中でまどろみ続けた。
「……鼻の穴がピクピクして、ブッサイクな顔になってるぞ」
彼女のこの言葉を聞いた瞬間、私の身体が反応した。私の肺の中の空気を少しだけ、鼻と口から押し出してしまった。
「……ぶふッ!」
「起きたか」
その指摘は卑怯だ。私は狸寝入りをしようと頑張っていたのに。そんなことを言われると反射的に吹き出して笑ってしまうじゃないか。
「いやひどいですよロドニーさん……オフッ」
「いや、実際ピクピクしてたからな」
「乙女に言うセリフではないですね」
「私を轟沈寸前まで追い込んでおいてよく言う……」
「あなたこそ……人の唇を奪っておいて……」
「唇と唇じゃないんだからノーカウントでいいだろう……」
私の隣で、同じく心地よい湯の中にその身を沈めているのは、先ほどまで私と『稽古』という名の潰し合いを演じてくれた良き敵、ロドニーさんだった。
私とロドニーさんがいるのは入渠施設だった。戦いの最後の横槍のあと、私とロドニーさんは気絶したまま、戦艦棲姫さんにつれられて入渠したらしい。ちょうど、気絶したままロドニーさんにここに連れて来られた、あの日の電さんと同じように。
ロドニーさんいわく、私と彼女は、冗談ではなく本当に轟沈寸前だったそうだ。いつ足元が海に沈み込んでもおかしくない状況だったらしい。あの場にいたのが他の艦娘ではなく戦艦棲姫さんだったのが幸いだ。彼女でなければ、私とロドニーさんを、たった一発の砲撃で黙らせるなんてことは出来なかっただろう。そしてあのまま戦いを続けていれば、どちらか一人……ともすれば二人共、轟沈していたことだろう。彼女にはあとで礼を言っておかなければ。
「あー、それからアカギ」
「はい?」
「あとでイナズマに謝りに行こう。テンリュウにも」
「なぜ?」
「えーとな……泣きじゃくってたそうだ」
「……電さんはわかりますか、天龍さんもですか?」
「テンリュウもだ」
電さんは分かるが、天龍さんもか……と私は少し呆れたが、考えてみれば彼女はああ見えて、意外と優しく涙も
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