British Rhapsody 〜赤城〜
Confession
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……そうですか」
「帰る決心はついたが、一つだけ心残りがあった。……お前だ」
「私との……稽古ですか」
「ああ」
本国へと帰ることを決心したロドニーさんは、『思い残すこと無くこの鎮守府を去りたい』と考えたそうだ。その時、彼女の心に浮かんだのは、鎮守府の仲間との別れの悲しみではなく、中途半端な形で提督の護衛の仕事を戦艦棲姫さんに丸投げする無念でもなく……私と死力を尽くして、全身全霊で存分に戦うことだったらしい。
「初めて会った時、お前の芯は私と同じだと思った。性根は優しく仲間思いだが、内に強大な闘志を秘め、強き者とは言葉よりも戦いで意思疎通を図る。……お前はそんな艦娘だと理解した」
「……」
「事実、他の子が私に対して戸惑ったり畏怖したりする中、司令官とお前だけは、私に真っ向から立ちふさがった」
――この場でビッグセブンを組み伏せるよりは、
海上で弓を得物に存分に戦いたいものです
「お前のあの言葉を聞いた時、感動で心が震えた。『このような強き者が、私と真っ向から戦ってくれるのか』そう思っただけで、喜びで涙が出そうになった」
「……」
「ここに来て、深海棲艦と和解して……楽しく長閑な日々を過ごす中で忘れていたが……帰国を決めた直後、その気持ちが再燃したんだ。お前と戦いたい。全霊を持ってお前と触れ合いたい……それを成さねば、本国には戻れない……」
「……」
「……そう、思った」
そう語る彼女の顔は、いつしか再び天井を眺めていた。初めて会った日のことを思い出すように……まるで懐かしい友のことを思い出すような眼差しで、静かに天井を眺めていた。
私も同じだ。彼女との楽しい日々が……深海棲艦さんたちとの戦争が終わり、戦いのない長閑な日々で久しく忘れていたが……
――貴公に、稽古をつけていただきたい
ロドニーさんのあの言葉を聞いて、初対面のときのあの気持ちが再燃した。いざという時は彼女を止めなければならない……そんな建前の理由で、私は彼女に追いつくために、ずっと練度を上げていたじゃないか。彼女と理解しあうために、ずっと研鑽してきたじゃないか。私も恋焦がれていたじゃないか。彼女と戦い、全力で潰し合い、そして理解し合うこの機会を。
もし彼女が何も言わず本国に戻っていたとしても、私は思い出すこと無く、彼女がいなくなった寂しさを胸に秘め、また長閑な日々を過ごしていたのかもしれない。それはきっと彼女も同じはずだ。本国に戻った後、この鎮守府に残してきた私たちのことを時々思い出し、向こうで姉や仲間たちと、静かにのどかな日々を過ごしていたのかもしれない。
でも、戦いを経た今だから思える。この充実を知ること無く過ごす日々に、どんな価値があるだろうか。この大きな満足を知らずに過ごす日々に、色はついて
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