MySword,MyMaster
Act-2
#3
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斃し、その報酬として聖剣バルムンクを手にした青年王子は、ファヴニールの血を全身に浴びたことで、竜の肉体にも等しい圧倒的な防御力を手に入れた。もしサーヴァントとして召喚されたならば、その悪竜の血鎧は、Bランク以下の物理攻撃をシャットアウトし、Aランク以上の攻撃によるダメージも大きく軽減する、非常に堅牢な肉体として再現される事だろう。
そんなジークフリートの弱点は、あまりにも有名だ。
ファフニールを殺害した際に全身に浴びた竜の鮮血。しかしその血は、菩提樹の葉が張り付いていた背中の立った一部分だけにはかからなかった。ジークフリートの背中はそこだけが不死に非ず。もちろん、彼でなくても、どのような英雄にとっても背中と言うのは大きな弱点となる。だが、ジークフリートに限っては、その一点だけが唯一にして、貫かれれば即死、という、最悪の弱点でもあるのだ。
ジークフリートと戦うならば、(斃す、という一点に関してならば)この背中の一点を狙うことだけを考えればいい。当然のことではあるがその剣の技量、圧倒的な戦闘能力による攻撃と防御をかいくぐっていかなければならない、という欠点はあるが……戦闘方法もまた、真名が露見すればジークフリートの伝説から、ある程度推測もできる。
このように、真名の露呈、というのは大変重要な意味を持つ。サーヴァントたちが名ではなくクラスで呼び合うのも、この真名が隠されているためだ。
聖杯戦争において、サーヴァントの真名は、常に隠さなければならない。
それが、初日にして暴かれてしまった。確かに黄金の聖剣を持つ騎士、と言われれば、真っ先に彼の名が思いつくのは当然だ。だが、あのアサシンは、セイバーの真名についてある程度の確信を持っていた――否、それどころか、他のサーヴァントの真名についても――
「……とはいえ」
ふと、セイバーの言葉で我に返る。
「幸いにして、俺の真名は露呈してもさしたる問題は無い。宝具の対策程度は取られるかもしれんが、それを乗り越えるだけの力があれば十分だろうよ」
強い自信に彩られた、セイバーの言葉。
それは慢心ではない。意思だ。彼がそうあるべき、と、自分自身に課した、未来への誓約。
「はい――頼りにしていますよ、セイバー」
だからグレーシャも、それに応えるだけだ。
***
かくして、聖杯戦争は幕を開けた。
偽りの儀式。架空にして夢想の、虚ろなる殺し合い。
旧き戦の模倣――偽りの叙事詩と知ってなお、己の願いの為に。
◆◆◆
「Ooooooooo――――!!! RooooooMeeeeeeeee―――!!!」
狂戦士は、さらなる鮮血を求めて月光に吠える。
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