British Rhapsody 〜赤城〜
Conversation with my Lover
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の『良き敵』との戦いを今、堪能出来ている。
言ってしまうのなら、私は今日、この戦いの果てに轟沈しても、何の悔いもない。この瞬間、ロドニーさんの対空砲火を受けて沈むことになっても、彼女を恨む気持ちはさらさらない。むしろこの戦いを演じられたこと、彼女が良き敵として私を選んでくれたことを、誇りに思える。
次第に呼吸が整ってきた。腹部のむかつきも幾分マシになる。相変わらず全身は痛く体力も回復していないが、それでも先程よりはマシだ。
「そろそろ……終わらせますか」
「そうだな……終わらせようか」
すでに徒手空拳になったロドニーさんが、バキバキと指を鳴らした。私は頭を左右に振り、首を鳴らして筋をほぐす。互いに相手を見つめ続ける。世界を相手のみに収束させ、認識を彼女ただ一人に絞った。彼女の一挙手一投足、息遣いや、筋肉と骨格の挙動……どんな些細な違和感も見逃すまいと、意識のすべてを彼女に向けた。
―― 私があなたに教えた基本を思い出しなさい
三度、鳳翔さんの教えが頭を駆け巡った。なぜ今? なぜこの状況で鳳翔さんの言葉を思い出す?
唐突に異質な砲撃音が鳴り響いた。その音はロドニーさんのものでなければ、艦娘のものでもない。
「がふぁッ!?」
私の真正面にいるロドニーさんが、私から見て右にはじけ飛んだ。激しく海面にたたきつけられつつ、遠くに転げ飛んでいったロドニーさんは、そのまま意識を失ったようだ。命を失ってしまったかのように、うつ伏せに倒れたまま動かない。
――自分の周囲のすべてを捉えるところから……
再び鳳翔さんの教えが耳に届くのと、私の全身に強烈な衝撃が走ったのはほぼ同時だった。
「ガッ……!?」
左側から私に襲いかかった強烈な衝撃は、私の全身を駆け巡り、私の意識に致命的なダメージを与えた。今の身体の許容量をゆうに超えたダメージを受け、私の意識が悲鳴を上げる。『まだ彼女と戦いたい』と声を荒げたが、私の身体がそれを許さなかった。
満身創痍の身体によって強制的に意識が閉ざされていく中、私の耳に届く声があった。私はこの時、その異質な砲撃音の正体にやっと気付いた。長い間聞く機会がなく、完全に忘却していた砲撃音だった。
「轟沈は許さん」
忘れていた。戦艦棲姫さん。この人の存在を完全に意識の外に追いやって忘れていた……。
「お前たちの稽古は、これで終わりだ」
彼女は、この、最後の瞬間の砲撃のためだけに……この場に……ロド
………………
…………
……
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