British Rhapsody 〜赤城〜
Conversation with my Lover
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ロドニーさんが、その三式弾が装填された砲塔をこちらに向けた。
「……ではいくぞ」
彼女の足元の水面が水しぶきを上げ始めた。主機の音がここまで聞こえる。彼女の主機があげる水しぶきが、私の頬と髪を濡らした。戦艦の主機の出力は、10メートルほど離れた私の身体に水しぶきをかけるほどに強大なようだ。
「わかりました」
私は彼女の主機の水しぶきを受けながら、艦攻隊の矢を構えた。ロドニーさんに正対し、静かに矢を引き絞る。見える射線のラインは……定まらない。だが今はこれでいい。
私は矢を引き絞ったまま、ロドニーさんは主機を全力で回し前進する力を蓄えたまま、互いに微動だにしないまま、時が過ぎる。互いが互いの動きにスキを見つけるべく、そしてそのスキを相手に見せないよう、互いに動かない時間が続く。
「……」
「……」
そうして私たちが互いに凝視したまま、数分が経過したときだった。私たちから少し距離が離れたところにいるはずの、戦艦棲姫さんの静かな……しかし私たちの耳元にまで届く、いつか聞いたことのある声色が聞こえた。
「……始めろ」
私とロドニーさんの、戦いの火蓋を切って落とすには、彼女の声は充分といえた。ロドニーさんの目に火が灯り、私の全身の産毛が逆立った。
先に動いたのはロドニーさんだった。私が矢を放つよりも先にランスの砲塔を私に向け、散弾とも形容できる三式弾の砲火を私に浴びせた。
「……ッ!!!」
「……」
――焦らず、佇みなさい
私は微動だにしない。三式弾が髪を焼く。頭髪が焼ける匂いが鼻につく。久しく感じてなかった戦場の匂いが鼻腔をくすぐる。頬と腕、体中をかすめる三式弾の赤く細い炎は、私に致命的なダメージを与えることなく、素通りしていった。
――三式弾は対空兵器です ゆえに距離が離れているほど弾幕は広範囲に拡散します
動かずに佇めば、ダメージは最小限で済みます
まさか昔に鳳翔さんに教わった対三式弾の知識が、こんなところで役立つとは思わなかった。多少肌と髪は焼けたが、私の身体自体には何のダメージもない。引き絞った矢を放ち、艦攻隊を発進させた。
ロドニーさんはフッと笑い、静かに前進をはじめる。それを受けて私も主機を回し、静かに後進して彼女との距離を調整した。以前に球磨さんも言っていた通り、彼女の航行速度は決して速くはない。恐らく彼女は、私との距離を詰めることはできないだろう。
先程放った艦攻隊を左右に大きく展開し、一度ロドニーさんの視界から隠す。続けてそのまま、私は艦爆隊を発進させた。
「艦爆隊か」
「防ぎ切れますか」
「無論だ」
私の艦爆隊は真っ直ぐにロドニーさんに向かって飛行し、そして天高く上昇した。ロドニーさんの
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