幽玄なるチャンピオン
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ムは自分のやりたいことをすればいいってことだよ」
「ううん、ありがとうジャックさん」
その父親がこの島にいるのにただ悩んでいても仕方ない。会って話を聞いてから考えればいい。自分を元気づけようとしてくれる師匠にお礼を言い、ジェムは前を見据える。すると、ジェムがシンボルを獲得した施設であるバトルクォーターの壁が、大きくえぐれているのが見えた。恐らくさっきの衝撃音の正体だろう。予想を裏付けるように、トレーナーの声とポケモンの動き回る音が夜に響く。
「……メタグロス、『バレットパンチ』!」
それは、ジェムが聞いたことのない声だった。メタグロスは命令に従い相手のポケモンに目にも留まらぬ鋼の拳を叩きこむ。ジェムが相手のポケモンの姿を確認する前に、その体や千切れ闇に溶けてしまった。だがメタグロスは勝利を喜ばない。すかさず周囲を警戒する。
「スイクン、ここで止まって」
ジャックが指示を出し、スイクンが向こうからは見えづらい場所に止まる。ジェムはスイクンから降りて、戦っているのが誰か確認しようと少し前かがみに覗き込んだ。そこには、予想外の光景が広がっていた。
「素晴らしいスピードとパワーだ。もしかしたらもう私より上かもしれないな」
「……『思念の頭突き』!」
戦っているのはメガジュペッタとメタグロスだ。メタグロスが額の十字に念力を纏わせメガジュペッタに突撃する。だがメガジュペッタはまるで闘牛士のように自分の黒い布地のような体をひらりと動かし、最小の動きで躱してしまう。そもそも攻撃が当たらない所に誘導されているかのようだった。外されたメタグロスの頭突きは地面にぶつかり、コンクリートが悲鳴を上げる。
お互い非常にレベルの高い技を繰り出しているのが一目でわかる激戦。だがジェムが驚いたのはそこではない。戦っているトレーナーは、知っている人たちだったからだ。
「ダイバ君に、お父様……それに、アルカも!?」
「しっ、声が大きい。もう少し様子を見よう」
思わず飛び出しそうになったジェムの首根っこをジャックが止める。ダイバがメタグロスに攻撃を指示し、ジェムの父親は何も指示していないがメガジュペッタはひらりひらり、手でつかめない夜桜のように幽玄で優雅に攻撃をかわす。それをアルカはウツボットを傍らに控えながらも遠巻きに見ている状態だった。
「さて、どうしたものかな。私としては君たちの争いを止めに来たわけだから。女の子の方はもうやる気はないようだし君も止めてくれると助かる。君のメタグロスの強力な攻撃をいつまでも躱し続けられる自信もないしな」
「ぬけぬけと喋るな。……『爪とぎ』と『コメットパンチ』」
そう、メタグロスを操るトレーナーは間違いなくダイバだ。思い返してみれば最初に聞こ
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