185部分:暗黒教団その二
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暗黒教団その二
「けど何でユリウス皇子に?皇子もヴェルトマーとバーハラの血を引く聖戦士後の者でしょ」
「そう、それなのだが・・・・・・」
「これからは私が話そう」
リーンの問いにイシュトーが答えようとしたがレヴィンが入ってきた。
帝国の圧政に対して暗黒神の血を引く皇族の一人でありながら民の為に反旗を翻した聖戦士マイラは帝国が滅ぶと一人マーファの森に去った。そこで一人の素朴な娘と結ばれ子を儲け静かに息を引き取った。その時己が子達に決して森から出ないよう言い残した。
マイラの子孫は森の中の小さな村で暮らしてきた。その中にシギュンという美しい娘がいた。
「シギュン・・・・・・」
その名は皆知っていた。前ヴェルトマー公ビクトルの正妻でアルヴィスの母でもあった女性だ。
ある時ヴェルダンを訪問したビクトルはマーファの森でヴェルダン王と共に狩りをしていた。その時偶然シギュンと出会った。その美しい容姿に心を奪われたビクトルは臣下や周りの者達の制止も聞かず彼女に求愛し半ば強引に妻とした。程無くアルヴィスが生まれた。ビクトルの妻への愛は異常と言ってもよいものであり周りの者が呆れ返る程であった。だがそれが裏目に出た。
妻の自分に対する愛情を信じられなかったのだろう。彼は次第に妻に対し暴力を振るうようになり部屋に閉じ込め自らは酒色に溺れるようになった。
シギュンに同情する者は多かった。バーハラのクルト王子もその一人だった。シギュンを慰めているうちにそれが愛となった。
その事を悟ったビクトルは激怒した。二人に恨みの手紙を残すと服毒自殺を遂げた。目の前でそれを見せられたシギュンも姿を消した。
シギュンはマーファへ戻った。この時既にクルト王子の子を身篭っていた。その子を産むと同時に彼女はこの世を去った。
「それが僕の母上なんだね」
「そうだ。ディアドラはクルト王子とシギュンの子だったのだ」
「ちょっと待って、じゃあアルヴィス皇帝とディアドラ様は兄妹なの?」
「その通りだ」
レヴィンはパティに答えた。
「じゃあアルヴィス皇帝は妹の夫を死に追いやりその妹と結婚したの・・・・・・」
「そして生まれたのがユリウス皇子・・・・・・」
「皇帝はまさかその事を・・・・・・」
カリンとフェルグス、アズベルが声を震わせて話し合う。ユグドラルにおいて親子や兄妹間等による近親婚は絶対のタブーとされているのだ。
「その通りだ。最初アルヴィスはその事を知らなかった。知っていればディアドラを妻としなかっただろう」
「じゃあ何故・・・・・・」
レヴィンの言葉をロドルバンが問うた。
「暗黒神を復活させる為だ」
一同その言葉に絶句した。
「ロプト帝国の皇族は暗黒神の力を強く受け継ぎその力を使える者を出す為代々近親婚を行なってきた・・
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