Side Story
少女怪盗と仮面の神父 41
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れ、奪っていただけで、良くも悪くも何一つ報いていないのです。このまま死ぬなんて嫌。私の所為で誰かが死ぬのは、もっと嫌。極刑を避けたいだけだろうと責められ、卑怯者と罵られても構いません。いつか私が苦しめた誰かに殺されるとしても、息絶える前に可能な限りたくさんのありがとうとごめんなさいを形にして、みんなへ返しておきたいんです。今はまだ、死ねない。死にたくない。死なせたくない。だから、お願いします」
一旦言葉を切って長く息を吐き、吸って……止める。アーレストの横顔をじっと見つめ
「私達を、助けてください」
使い慣れない音を並べた。
緊張で手のひらに汗が滲む。喉が渇く。
(でも……だからこそ、シャムロックが犯した「本当の」四つ目の過ちは、これなんだよね。多分)
シャムロックは誰にも頼らなかった。みんなの為だと勝手に思い込んで暴走するくらい、誰も信じていなかった。そうして、顔も名前も知らない被害者を大勢生み出した。
相談するべきだったのだ。シャムロックの事も、仕事探しの事も、ハウィスの役に立ちたいと願った事も全部。周りの人達に、正直な気持ちを打ち明けるべきだった。
(今更だけど、相談しろって言ったのは貴方だもん。都合良く頼ってやる! 無視はしないでよ? 誰かに頼るのって結構、度胸が要るんだからね! あぁ、嫌な汗が止まらないーっ!)
腹黒い策士とか、あんた呼ばわりとか、ド阿呆とか。散々な言い様をした相手に助けを求めるなんて、図々しい? 厚かましい? 恥知らず? 上等だ。幾らでも呆れれば良い。嫌われたって、それがどうした。みんなを助けられるのなら、自尊心も自衛心も喜んでかなぐり捨ててやる。
そんな気持ちで耳奥に破裂しそうな鼓動を聴きながら、アーレストの横目を覗いて答えを待つ。
「……何故?」
「え?」
動きは無いが、無視はされなかった。
ほっとする反面、疑問の意味が解らず、首を捻る。
「イオーネさんはアルスエルナを不要な物、邪魔な物としか見ていません。此処で彼女を助けても、いずれまた襲い掛かってくるでしょう。監視を名目にしても、権力者の近くで匿えばその分、更に細かく正確な国内外の情報を集めやすくなる。今度は確実に叛乱の烽火を上げますよ。他国を巻き込む大河の如き奔流……貴女に止められるとは思えません。厄介事の種を好き好んで育てるより、多少強引にでも朽ちさせておいたほうが、後々安全なのではありませんか?」
「……神父様……なんか、印象が変わってませんか? 柔らかく表現したつもりかもですが、要は「此処で殺したほうが良い」って話ですよね? めっちゃくちゃ物騒なんですけど。聖職者の台詞ですか、それ」
「事実を口にしているだけです」
いや、事実だろうがなんだろうが、慈愛を謳う神父が子供に殺人を推奨しちゃ駄
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