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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 41
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疎い子供が、こうすれば良いのかと誤認しちゃいますよ? まさか、無知を自覚しているが故に生粋の貴族を真似て距離感を誤ってしまった者にまでいちいち不敬を問うおつもりですか? 親しい貴族だけは例外にして? それこそ暴君、独裁者だと自国民に軽蔑されますよ。出過ぎた物言いを承知で申し上げますが、何事も初めは形から入るもの。高貴なる方々には是非、常日頃から敬意の払い方等の正しいお手本であっていただきたいと考えます。本件はベルヘンス卿の過失って事で、お父様の寛大な恩情に期待したいです」
 「その理窟で赦されるのはお前だけだ。イオーネは立派な成人で、元は子爵に仕えていた侍女。礼儀を知らぬ道理は無い」
 「真に誇り高き貴族に仕えていたのなら、下で働く者としての礼節に疑問を挟む余地はありません。けれど、お父様は子爵をどう評価しましたか? 国防を柱とする貴方の目に映った子爵は、一般出のイオーネを正しく導ける、良きお手本でしたか?」
 「少なくとも王族に殺気を向けたりはしなかったが……まぁ、そうだな。追い詰められて愚行に走る短慮さはよく似てるか」
 「でしょう? 仮にも暗殺者を名乗るなら、獲物の前に飛び出しちゃ駄目ですよねぇ。バーデル軍が現れるまで隠れていれば私達のほうが不利だったのに、暗殺の領域を自分から捨てちゃう残念ぶりですよ。不幸にも、侍女職を通して子爵の愚か成分を受け継いじゃってるとしか思えません。ですが……短時間でも間近で見ていた私なりの感想を述べさせていただきますと、彼女、再教育を施せばアルスエルナにとって戦力面で非常に有益な人材になると思うんですよね。ほら、お父様も先程、人材は有限だと仰ってましたし。此処は彼女の将来性を買って、試しにお持ち帰りしてみませんか?」
 「……ふむ。使える人間は多いほうが良いのは事実だ。しかし、バーデル軍が何処から現れるか判らない状況下で、どうやって持ち帰る? 見つかったら終わりだぞ」
 「あんまり現実味は無いのですが、可能性に賭けてみようかと」
 「可能性?」
 訝しむ王子へ頷き、イオーネの右肩に顎を乗せているアーレスト神父の前で両膝を突く。
 「神父様」
 呼び掛けても反応は無い。瞬きすらしない。暗闇の影響もあって、髪と目の色を失くしたらまるきり本物の彫刻だ。しかも、全身ずぶ濡れ。不気味すぎる。
 「……そのままで良いので、話を聴いてください」
 女神へ祈りを捧げるように重ねた両手で、短剣の柄を強く握り締めた。
 アーレストは、指一本動かさない。
 「神父様が導いてくださったから、私が苦しむのは自業自得だと理解できました。本来なら私こそがこの場で断罪されるべきなのだと思います。でも、私を護る為に命懸けで戦っている人達がいます。心配しながら帰りを待ってくれている人達もいます。私はまだ、彼らに何も返せてない。護ら
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