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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 41
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、王子が首を傾けた。
 「終わりか?」
 「ええ、一応。一つ気付いたんですが……力を入れて殴ろうとすると、逆に抜けちゃうものなんですね。できれば下を向いて欲しかったのに、彼女の目線は微動だにしてくれませんでした。首を抱えられてる所為でもあるんでしょうけど、なんか悔しいです」
 一瞬驚き、直後に極悪化した目付き。恐くて堪らないので、もう二度と直接は覗き込みたくない。
 サッと顔を逸らし、今度は王子と向かい合う。
 「お前が臆病なんだろ。人殺しへの罰が拳骨落としで終わりとは、随分軽いな?」
 「だって私、彼女が人を殺す瞬間を一度も目撃してませんもの。商人達の殺害に関しては「彼女の犯行」を示す物的証拠が手元にありませんし、暗殺組織の首領っていうのも実際はどうなんでしょうね? 他の人達、私の前には全然出て来なかったんですけど。もしかして、本人が「私は暗殺者だぁー」って言ってるだけじゃないですか? アルフィン誘拐と私への脅迫と神父様の殺人未遂は現行犯ですし、貴方に斬られた背中の傷も考慮して裁きましたが……いけませんよ、お父様。証拠も無いのに参考程度の証言だけで鉄槌を下すとか。万が一イオーネが自称暗殺者の「頭がちょっと可哀想な人」だったら、貴方の指示と私の決断に対して一般民が大激怒です。批難(ひなん)囂囂(ごうごう)です。ただでさえ貴族への風当たりが厳しいのに王族への反抗心まで量産なんかして、アルスエルナが内側からひっくり返ったらどうするんですか」
 「……なるほど。では、私に対する不遜で無礼な態度は裁かないのか? 王族への礼に欠けた振る舞いは、即刻打ち首にされても仕方がない重罪だぞ」
 「ベルヘンス卿も自分から貴方に声を掛けてましたよね。貴族社会では下から上に声を掛けるのは不敬だと記憶してますけど、彼も裁きの対象ですか?」
 「ベルヘンスの生母は私とアーレストの乳母だ。幼少期の関係上、両陛下と私が特別に許している」
 (は? アーレスト神父と王子が乳兄弟!?)
 「許すじゃなくて、一族ぐるみの強制でしょう……(おかげさまで、他家にどれだけ睨まれてるか……)」
 ベルヘンス卿が項垂れて、腹部の少し上辺りを擦りながら重苦しい溜め息を吐く。後半は小さく呟いたつもりかも知れないが、距離を置いたミートリッテにもバッチリ聞こえている。
 (そうか……。王子がアーレスト神父と親しげだったのは、そういう……ん? 王族と同じ乳母が付いてた? じゃあ、アーレスト神父も王族に限り無く近い家の生まれ……なの?)
 何度じーっくり見直しても、やはり二人の顔立ちや雰囲気は似ていない。片や、近所の地味なお兄さん。片や、歌って走る芸術品。血縁者とは到底思えないが。
 「……だとしても、元・一般民のなりたて貴族もどきが居る場所で披露して良い態度でしたか? 王候貴族の常識に
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