暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 41
[2/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
よ? それでも……大好きなお父さんに今以上の苦労を押し付けてでも、ハウィスを止めたい? イオーネの命を掬いたい?」
 自身の深傷を抉る代わりにミートリッテを護ったハウィスのように。
 愛する妻を失ってもなお、血の繋がりを持たないアルフィンを実子として慈しんでいるグレンデルのように。
 イオーネが生きる未来の為に、自身の時間と思考と体力を費やせるのか。その覚悟を持ち続けていられるのか。
 「……ミー姉は」
 「ん?」
 問い掛けの間中、唇を噛んで俯いていたアルフィンは、そろりと顔を上げ
 「ミー姉は私を……信じて、くれる……?」
 恐々と尋ね返した。
 (……保証が欲しいの? 自分に命を預かれるだけの覚悟があるのか、私の目で判断して欲しいって事? だとしたら)
 答えない。
 不安色に染まる少女の顔を、ひたすら無言で見つめ返す。否定もしなければ肯定もしない。
 保証するのは容易い。アルフィンなら大丈夫だよ! と、一言告げるだけで良い。
 しかし、アルフィンが求めているのは「責任の分担」だ。不都合が起きた際「あの時、ミートリッテがこう言ったから信じたのに」と現実から目を逸らす為の口実。
 大丈夫にせよ、止めなさいにせよ、誰かに背中を押された事実がある限り、どちらを選んでも彼女自身の答えにはならないのだ。
 命の行く末を左右するアルフィンの決断に、他者の意思が介入してはいけない。求められ、支えるべきは、選択の先。本音では諦めてくれれば良いと思っていても、今はアルフィンに委ねる。
 「…………」
 早くアルフィンを連れて行け、自分を殺せと喚き散らすイオーネの前で繰り広げられる、沈黙の攻防戦。
 「……ミー姉」
 先に声を発したのは、アルフィンだった。
 「イオーネさんを……助けたい」
 「アルフィン!!」
 この場に居る全員の鼓膜をぶち抜きそうな怒声にも揺るがない、左右で色違いの真っ直ぐな目線。
 迷いは、無い。
 「……うん。解った」
 ミートリッテを貴族にさせまいとしていた騎士達の気持ちが、少しだけ理解できた。これは確かに、自分一人さえ支えられない子供には残酷な道だ。
 けど、選んだのは紛れもなくアルフィンの意思。
 だったら、歩かせる。彼女が自身で進むと決めた未来を。
 「では、改めて裁決! よぉく耳を澄ませてお聴きなさい、アリア信仰の神父殺害を企てた無断越境者よ!」
 イオーネに向き直って勢いよく立ち上がり、首から離した刃を天に掲げ

 「悪い子には、おしおきッ!!」

 イオーネの頭頂部を目掛けて、柄頭を振り下ろす!

 「「「…………はい?」」」
 ぺし! と響く、間抜けすぎる音。
 削がれまくった緊張感で一同の目が点になる中、腰に両手の甲を当てて胸を張る得意気なミートリッテを見て
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ