MySword,MyMaster
Act-1
#4
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赤になっているのだろう、と思うと、とても他人には見せられたものではなく、思わずうつむいてしまった。
その様子をみて、セイバーは数刻ほど固まった後、唐突に大笑いし始めた。
「わ、笑わないでください……! 仕方がないじゃないですか、好きなものは好きなんですから!」
「ふ……ふは、ふっははははははは!!! そうか! そう言い切るか魔術師の娘! なるほど……なるほど……ククク……俺の末裔と俺の今世におけるマスターが恋人……くくく、これはマーリンも爆笑ものの一大事件だな……」
「もう……それに、言いがかりは止めてください。我が王の沽券に係わります。まだ正式にお付き合いしているとかそう言うのじゃありませんし……そもそも私程度が、あの人に相応しいとお思いですか。そんなわけがありません」
「――――」
するとまたセイバーは、今度は腹を抱えて笑い始めた。これはダメだ、もうダメだ、豊穣祭の際にガウェインが出した料理が全部イモだった時よりも笑える、などとのたまう騎士王。
あまりにも『あんまり』な彼の態度に、グレーシャは頬をふくらませてぷい、と彼から目線を外した。
グレーシャは、裕一のことが好き。まさか露見したが最後、ここまで笑われるとは思わなかった。単純にセイバーの笑いのツボがおかしいのか、それとも誰に言っても笑われるのか。
本来ならば絶対的な主従関係、敬意と敬愛を以てして仕えるべき対象に、恋愛感情を抱く――それがいいことではないとグレーシャ自身は考えていた。その事実を知っているのは、本当にごくごく一部の友人たちだけだし、全員にかたく口止めを依頼している。彼女たちの反応は何故か微笑ましいものを見る大人の目であったが、彼女たちが特別なのか。セイバーが特別なのか。
何にせよ、上司と部下の恋、というのは、騎士王にとっても、恐らくあまりいい思い出の無いワードなのではないか、と類推される。彼の妻グヴィネヴィアは、円卓一の騎士たるランスロットとの不倫関係にあり、それを契機に円卓は瓦解を始め、アーサーの子、モードレッドの反逆を以て完全に崩壊するのだ。
しかし騎士王はそんなことは知らぬ存ぜぬとばかりに笑い続ける。
しばらくして、やっと笑いのピークが治まったのか。セイバーは、しかしまだ微妙に肩を震わせながら、言った。
「無事この戦争より生き延びたら受肉でもして、オマエらの仲人にでもなってやろう……こう見えて、なかなか難儀な恋をしていた男の恋愛を成就させたこともあるのだぞ」
それがランスロットの事なのか、ガウェインの事なのか、それともまた別の円卓の事なのかまでは分からなかったが。
取りあえず、余計なお世話です、とだけ言っておいた。
***
僕と出会った時、グレーシャに名前は無か
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