暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/PhantasmClrown
MySword,MyMaster
Act-1
#3
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てこれない。もしかしたら戦いの間で死んでしまって、もう二度と現実世界へと還ることは無いかもしれない――

 そう思ったら。

「……裕一」
「なに?」

 ちょっと、不安になってしまう。

「裕一。私――」

 ああ、でも。でも。でも。
 彼を心配させることなんかできない。大好きで大切な王様(ゆういち)に、手駒(わたし)を過度に心配させるようなことを言ってはいけない。
 だってそう言う契約だ。それに此処で何か約束することは、なんとなく不吉だ。

 だから。

「行ってきます」

 そう、言うだけ。

「……うん」

 裕一も、頷いてくれたから、きっとその続け方は、間違ってはいなかったのだろう。

「行ってらっしゃい」

 王からの声援を受けて。

「行きましょう、セイバー。聖杯を、我が王に捧げるために」
「了承した。俺はそのためにこの剣を使おう」

 グレーシャとセイバーは、時空の歪みに身を投げた。
 


 ***


 
 ――行ってしまった。
 雪華。僕の騎士。蒼銀の剣士を伴って、彼女は異世界へと旅立った。

 ここからは、彼女と直接話したり、向こうの様子を直接知ることは不可能だ。
 できるのは、鏡面界を解析し、そこで起こっていることの概要を予測することだけ。

「局長。鏡面界に、新たなサーヴァントとマスターの出現が確認されました。グレーシャとセイバーと推測されます」
「分かった」

 幹部の一人が、観測室から受け取った情報を伝えてくれた。同じ風景を見るための装置は僕の部屋にもある…グレーシャが来た時に見ていた奴だ…けど、観測室で、全員で見た方がいい気が、なんとなくして。

「いこう。聖杯戦争の行方を、出来る限り知るんだ。それで――できるなら、向こうの景色を、もっとうまく観測できる装置や、向こうと連絡を取る手段を確立させよう」

 それが、僕ができる唯一の指示。
 離れ離れになった僕の騎士にできる、数少ないバックアップ。

 騎士王だけに頼ってはいられない。

 僕も一応、『王様』だってことを、なんとかして知らしめなくちゃ。
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