MySword,MyMaster
Act-1
#2
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。その唇が、喉が、音を紡ぐ。
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を、破却する――
「――素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が王、束裕一。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王国へと至る三叉路は循環せよ」
魔法陣が、光を灯した。雪華の詠唱に、答えたのだ。
――始まる。
「告げる。汝の身は『我が王』の下に。『我ら』が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば答えよ――」
英霊召喚の詠唱は、本来の決まったモノに、アレンジを加えることでも十分に機能する。触媒と、そしてアレンジされた詠唱。そのどちらもがあれば、望みのサーヴァントをほぼ確実に呼び出すことも可能、とされているほどに。
雪華は(僕としてはちょっと恥ずかしいけれど)、自分よりも僕、すなわちは『聖遺物の持ち主』、『正しき聖剣の継承者』とサーヴァントたる騎士王の間の縁を強調することで、よりアーサー王が召喚されやすいように考えているのだと思う。
「誓いを此処に。我は常世全ての善となる者。我は常世全ての悪を敷く者」
黄金の輝きが、溢れ出る。
室内だというのに、強風が吹き荒れた。出所は魔方陣だ。膨大な魔力の奔流が、召喚室を駆け巡っているのだ。僕も幹部たちもたまらず腕で顔を覆う。
けれど雪華だけは、微動だにせず祝詞を続ける。まるで巫女――いや、英霊をこの地に呼び寄せる、巫女そのものとして。
「汝、三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!!」
閃光。徐々に徐々に強くなっていった魔方陣の光が、爆発。
そして真っ白に染まった視界の向こうに、映る、影。
がしゃり、という音。靴音。鎧の、音。段々大きくなっていく、その音。
立体魔方陣と化した召喚の陣の奥から、『彼』は現れた。
それは『騎士』だ。蒼銀の騎士。
悪魔とも竜とも取れる全面兜で顔を覆ったその騎士は、傷つき、錆が浮き、しかしそれでも輝きを損なっていない白銀の鎧を身に纏い、だらり、と両手を下げて、降臨した。
「おお……」
幹部の内の誰かが、思わず声を漏らす。あるいは、それは僕の声だったかもしれない。
現れた騎士は、真っ直ぐに、雪華を見据えていた。
「――問おう」
蒼銀の騎士は、声に出す。罅割れたようなエフェクトの掛かった声。しかし、確かに『王』であると分かる、威厳のある、若い声。
「――オマエが、俺のマスターか?」
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